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31.学問のすすめで福澤諭吉が伝えたかった貧富や身分の差ができる理由

「天は人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず」これは福澤諭吉学問のすすめの有名なフレーズです。福澤はこのメッセージで伝えたかったことは何なのでしょうか。福沢諭吉の生い立ちを探りながら答えを探していきます。

■文明開化
開国後から明治時代、日本に西洋文化の影響が及んでいく中で、一般市民の生活の中にも西洋のものが取り入れられていきました。こうした風潮を文明開化といいます。洋服、洋食、洋館などの衣食住、風俗、文物、また、欧米の学問を学んだ人たちの中から西洋の知識や制度を取り入れていこう主張する人も増えていきました。「学問のすすめ」で有名な福沢諭吉はその中の一人です。

福沢諭吉の生い立ち
1835年、豊前中津藩(大分県中津市)の下級武士の子として、大阪にある中津藩蔵屋敷で生まれる。1854年、19歳で福澤は長崎へ遊学し、蘭学を学ぶ。兄からの勧めでオランダ語で書かれた砲術の書籍を読む必要があった。その後の1855年、医者で蘭学者緒方洪庵の開く「適塾」で学ぶ。そしてその適塾で、1857年には最年少の22歳で塾頭になる。1858年の23歳のとき、中津藩から江戸出府を命じられる。江戸の中津藩邸に開かれていた蘭学塾で講師となる。1859年、福澤は日米修好通商条約により外国人居留地となった横浜に出かける。これまで学んできたオランダ語の腕試しを行う。しかしそこで使われていたのは英語であった。これまで苦労して身に着けてきたはずのオランダ語が全く通じず、福澤は衝撃を受けた。その後、江戸で英語の先生を探すが見つからない。そこで英蘭対訳辞書を購入、独学で英語を学ぶことにする。蘭語の単語を1つ1つ英訳しながら勉強を進めるのは効率が悪いため、仲間を勧誘、原田敬の同意をえて、ともに勉強を続ける。

■遣米使節
1859年、幕府は日米修好通商条約の条約締結のために遣米使節(万延元年遣米使節)をアメリカに送る。米軍艦の護衛船はオランダから購入した「咸臨丸(かんりんまる)」に決まる。福澤は軍艦奉行・木村摂津守の従者として使節団に加わる。船には木村、福澤のほか、勝海舟(咸臨丸の指揮官)、中浜万次郎(ジョン万次郎)らも乗船する。出航直後、嵐に見舞われて船も破損するもののサンフランシスコに到着。福澤の自伝「福翁自伝」でもサンフランシスコのエピソードが紹介されている。福澤とアメリカの少女、テオドーラ・アリス・ショウとの写真が残されている。なお同乗したジョン万次郎は、アメリカをよく知る人物。14歳のときに足摺岬沖にて漁の際中に船が難破し漂流、
その後アメリカ合衆国捕鯨船ジョン・ハウランド号に救助されアメリカ本土に渡る。1851年に琉球経由で帰国。土佐出身でもあるジョン万次郎の見聞は、坂本竜馬らにも大きな影響を与えたものと考えられる。

■遣欧使節
その後の1861年、幕府はヨーロッパへ遣欧使節(文久遣欧使節)を派遣する。福澤も「翻訳方」としてこの幕府使節団に同行する。イギリス軍艦に乗り、スエズに上陸。エジプト、フランス、イギリス、オランダ、ロシア、プロシア(ドイツ)などを約6カ月かけて歴訪、その際の内容を「西洋事情」にまとめている。欧米の文化、社会、政治、軍政、経済、倫理などが紹介されている。「西洋事情」は1861年に出版され、25万部売れ(海賊版を含む)、当時の驚異的なベストセラーとなって文明開化を前進させた。

慶應義塾の開設
1868年、33歳の時に、江戸・築地の蘭学塾を芝(港区)に移し「慶應義塾」と命名。慶応は当時の年号に由来したもの。福澤は1872年より学問のすすめの初編の出版を開始。
1876年に第17編をもって完成、1880年に前書きを加えて合本化された。

学問のすすめ
学問のすすめの有名なフレーズ、「天は人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず」の意味は、生まれたときには上下の差はない。貧富の差や身分の差ができるのは、その人に学問があるかないか次第であることを示した。日本人が進むべき道として「学問を学んでくべき」という方向性を示した。

意訳すると、日本では当時、封建制や身分のしがらみで何をするにしても自由を抑圧されていた。生まれた初期値、初期条件ですでにどこまでできるかがきまっていた。しかし、しっかり勉強をすればアメリカのように、家系や身分で評価されるのではなく、世の中に何をなしたか次第で評価してもらえる。そして機会平等として教育は必要。良い意味での学歴主義によって自分の努力、向上心次第でどこまでもたどり着くことができる。ゆえに、結果が不平等となることもある。学ぶ、学ばない選択するのは個人の自由意志で決められる。

300万部のベストセラーとなる。当時の日本の人口は3000万人と言われており、日本の10人に1人が書籍を買った計算になる。

あなたは学ぶ派、それとも、学ばない派どっち?

学んだ未来の先に、何が待ってる?

<参考>
・現代語訳 学問のすすめ 斎藤孝=訳
・まんがで読破 学問のすすめ
福澤諭吉 - Wikipedia
ジョン万次郎 - Wikipedia