シン・ニホンシ

日本の歴史を新しい視点でとらえ、検証し、新しい未来を考える

39.社会主義が目指した理想と失敗、幸せって何?

社会主義共産主義をおさらいする。日本は資本主義なのか、社会主義なのかを考える。そして幸せとは何かを考える。次の流れで紹介していく。
・資本主義の問題点を解決するために生まれた社会主義
社会主義
社会主義の問題点
社会主義国が行った修正
社会主義国的なトップダウンの良い面
社会主義共産主義の違い
・日本は資本主義国家なのか、社会主義なのか
・日本のどこに社会主義国的要素が入っているのか
・なぜ日本で社会主義がある程度実現できているのか
・経済論でもって幸せを考えても幸せにはなれない
学問のすすめ的な、幸せのために必要なこと
社会主義の失敗をどう生かすか

■資本主義の問題点を解決するために生まれた社会主義
産業革命でたくさんの工場が生まれました。すると大量の製品を短時間でつくる必要に迫られるようになりました。そのため、資本家は工場に投資したり、労働者を雇って管理しました。この結果、富が一部の資本家に集中するようになっていきました。これでは人口のほとんどを占める労働者たちは幸せになれません。この問題を解決しようと登場したのが「社会主義」です。19世紀のドイツの経済学者・マルクス経済学の理論をもととし、指導者がそれを解釈して彼らなりの実践が行われました。

社会主義
生産手段や経済活動を国有化して国が管理する。そして社会や労働者に「うまく分配」する。そうすることで社会を平等にしよう、とする思想です。この「うまく分配」することが成功のカギとなるため、国のリーダーが生産活動を計画することになります。

社会主義の問題点
体制側の問題点と労働者側の問題点の2つにわけて考えます。

1.体制側の問題点
 国が管理するといっても、実際は官僚が経済計画を立てます。人事や生産などの計画です。恐慌なども発生しないようにすることが大切です。生産計画をうまく増減して調整させる必要があります。すると、その結果として官僚の腕次第となり、完了による支配が起きます。当然うまくいかないこともおきます。失敗が起きると隠蔽されやすくなります。

社会主義では指導者が権力者となりやすくなります。コントロールするために自由を抑圧したり、民衆が蜂起して革命を起こさせないようにしようとします。何かあると封じ込めたり、監視のためのインフラを構築しようとします。

2.労働者側の問題点
労働者側としても国が決めたことに従うだけとなり、向上心が生まれにくくなります。100がんばった人と、50くらいでこれくらいでいいや、という人の賃金は平等で同じです。役割が同じなので、結果平等です。結果、社会が停滞します。

社会主義国が行った修正
実際の社会主義国は、体制は社会主義をとり、経済は資本主義を採用している場合があります。しかし、これも一部のリーダー層に富や権力が集中します。軍によって統制を行うため、指導者層が軍を統制できる仕組みになっています。民衆の蜂起が起こらないよう、監視を強化しています。

結果として、自由(思想の自由、行動の自由)が奪われています。宿命的な制度の欠陥と言えるかもしれません。国・官僚が管理することになります。当然、問題が起きたときは国の責任です。そのため、問題自体が起こらない、または起こらなかったことにしようとします。

例えば、コロナにおける都市封鎖などです。この対応がいいか悪いかは別として、コロナの感染が拡大してしまうという「問題自体」がなくなるように、封鎖しろ、という発想になります。経済重視の考え方の方からすると、問題では、となります。

また問題が起こらなかったことにしようとする場合があります。列車事故が起きた場合に列車自体を検証せずに埋めてしまうとか。

社会主義国的なトップダウンの良い面
 道路などのインフラや、ITやAIなどの先端技術の導入時、通常は問題が多くてなかなか進めることができません。たとえば自動運転車の導入にあたっては法に基づいて制度ができています。既存の道路交通法などの法を変えていく必要があります。

責任の所在や管轄が不明確でルール変更に労力を要します。それがトップダウンで決められれば、普及がスピーディーになります。

社会主義共産主義の違い
社会主義がより発展したものが「共産主義」です。社会主義は計画をコントロールする側と、される側といった階級が存在します。共産主義はそれすらもなくし、すべての人が共同で財産を所有している、という状態を目指すものです。

しかし、共産主義を目指した旧ソ連が崩壊しました。結果、共産主義社会主義の違いが実態としてはなくなりました。よって、ほぼ同じととらえてよいと思われます。

なお、現在の社会主義国は中国、ラオスベトナムキューバ北朝鮮です。社会主義のそれ自体に大義名分が入っているため、独裁者に都合よく利用されやすいです。これが一番社会主義の危険なポイントかもしれません。

■日本は資本主義国家なのか、社会主義なのか
日本は資本主義国家です。しかし社会主義要素がたくさん入った国です。例えば、中央銀行となる日本銀行で資金量をコントロールしていること。公共事業、社会保障は国の管轄で行っていることなど。完全に市場経済に任せているわけではありません。

■日本のどこに社会主義国的要素が入っているのか
規制(何をしてよいのか、悪いのか)や、補助金(つまり国民の税金)によりどの産業を活かすか、をコントロールしています。また保険や年金もコントロールしています。
もちろんコントロールしきれなく、不平等や人口減少時代に存続させていけるのかなどの問題が紛糾している、というのは別問題です。社会主義のいいところも取り入れながら対応してきた結果だと言えます。

■なぜ日本で社会主義がある程度実現できているのか
1.元来のいいものは取り入れて改良するのが得意だから
2.人民の倫理規範がしっかりしている
 長い年月をかけて醸成されてきた「徳」のような倫理規範が人民にあります。   また非常に勤勉です。だから、他国に比べれば腐敗しにくいのでしょう
3.封建制を経験したから
 封建制などを何百年もかけて経験し、うまく階級層がわかれている中での資本主義導入、その後は社会主義のいいところは導入 などとしてきたからでしょうか。土地の分配、インフラの発達度などの資産、領主と労働者の人口比率などがいいあんばいで、革命を起こしてやろうというほどでもないものと思われます。

■経済論でもって幸せを考えても幸せにはなれない
 資本主義を批判する形で、ある意味実証実験として社会主義が生まれました。マルクス経済学の理論をもとに、社会主義国の在り方が検討されてきました。誕生から100年以上を経た結果は、どうでしょうか。社会主義国をみてみますと、一部の権力者に富が移り、自由は抑圧され、また労働分配の成果としての社会基盤においても、資本主義社会に比べれば見劣りしてしまうというのが本音でしょう。経済論から幸福を考えても、理想にはたどり着くことはできないのでしょう。

学問のすすめ的な、幸せのために必要なこと
 やはり機会提供は公平。与えられた機会をどう生きるかは自由。ただし、その結果は本人次第。同じゴールはない。結果のいい意味での不平等はありえる。成功する者もいれば、そうでない人もいる。しっかりと勉強をして学ぶことが幸せにつながるのではないでしょうか。

社会主義の失敗をどう生かすか
 自由主義の修正、社会主義的要素をもう少し強くするなどで、幸福な社会は目指せるのでしょうか。例えば「ベーシックインカム」で収入保障してはという議論もあります。ベーシックインカムは、基礎的な給料を与え、それで収入を保証、分配してはどうかという制度です。問題点は、財源の確保が難しいです。労働意欲が低下します。例えば月8万円もらえたとしたら若者はどうするでしょうか?夢や希望という意味では確かに魅力的ですが、一方で、問題点が多いと思います。4万円くらいで住めるところに住み、残り半分で生活できる範囲でやっていく人が出てくるのかも。社会主義でも勤労意欲が低下し、停滞を招きました。社会主義の失敗事例を踏まえながら、一人一人の幸せとは何なのか、その社会システムはどうすればいいのかを検討する必要があります。

<参考>
・はじめて学ぶみんなの政治
・必ずわかる!「〇〇主義」辞典
「社会主義」と「共産主義」の違いとは? それぞれの意味を解説 | RUN-WAY