1960年の新安保条約では集団的自衛権が前提となった。しかし日本はこの権利を「保有」と「行使」にわけて考え、保有はするが、行使はしないとの立場をとった。米軍からの自立や国際情勢における自衛隊の役割の変化の中で、憲法改正は棚上げとしつつ、集団的自衛権の行使は閣議決定で対応した。次の流れでみていく。
・集団的自衛権の行使
・冷戦の終結と薄れていく在日米軍の意義
・在日米軍の撤退にかかわる問題
・日本国民の心理
・湾岸戦争と国際社会からの批判
・PKO協力法の成立
・改憲から解釈改憲へ
■集団的自衛権の行使
日本は「集団的自衛権」を保有するが、行使はしないとの立場をとった。日本の場合、行使にあたって「憲法との整合性」が問題となるからだ。
・(個別的)自衛権
⇒ 放棄しない範囲で武力を保持するとの解釈をとる
・集団的自衛権
- 国際法上も権利を「保有」はしている
- しかし「行使」はできない
との立場をとってきた。
■冷戦の終結と薄れていく在日米軍の意義
憲法は現実的状況をふまえるうえで矛盾している。
GHQも占領当時は
・君民一体の解除
妥協案として国体護持を許容、天皇制は残す
・日本の武装状態の解除
などを目的として日本国憲法を導入させた。その後の改正はかまわないとのスタンスであった。1991年のソ連崩壊による冷戦の終結をもっていったんの資本主義対社会主義のイデオロギー的対決は終わった。このため、アメリカが日本を守る理由は薄れてきている。近年、以下の傾向がみられる
・2013年:オバマによるアメリカが「世界の警察をやめる」発言
・2016年:当時大統領候補であったトランプ氏が
在日アメリカ軍の撤退について言及。アメリカ国務省は否定。現在アメリカは中国との覇権国争いの問題の中において日本を利用したい。それが相互のメリットであるという立場である。
■在日米軍の撤退にかかわる問題
自国に他国の軍が駐留しているという事態は異常である。しかし、日本国憲法施行後、日本に平和が守られてきたのは、アメリカ軍が「韓国」および「日本」に物理的に 駐留しているためである。仮に撤退した場合、ロシア、中国、北朝鮮、そして韓国からも、領土問題で衝突する可能性がある。
■日本国民の心理
しかし、日本国民自体が戦争アレルギーとなっている。世論形成は御用学者やマスコミがカギを握る。世論を分断する工作も展開されてきた。日本が国家としての存続に必要な国家安全保障に関しても、意見がまとまにくい構造である。
■湾岸戦争と国際社会からの批判
1990年8月、イラクがクエートに侵攻した。多国籍軍が編成されて湾岸戦争となった。その際、日本は多国籍軍に兵力を送らなかった。代わりに135億ドル(当時1兆7500億円)を拠出した。しかし国際社会からは「小切手外交」と批判を浴びた。支援を受けたクエートがのちに感謝の広告を出した。しかしそこに「JAPAN」はなかった。「クエート感謝広告問題」とされる。送金だけでは「JAPAN」という5文字の広告枠を確保する価値にも値しないことが判明した。
■PKO協力法の成立
1992年、PKO法(国際平和協力法)が成立する。カネ、モノだけでなく、ヒトでも貢献しようとするもの。1992年6月にはカンボジアに陸上自衛隊施設部隊600名を派遣した。2003年のイラク戦争において2003年~2009年まで自衛隊のイラク派遣が行われた。これまで活動地域は「非戦闘地域」に限られていたが、 戦闘地域との論議のある地区での派遣となった。2012年~2017年までは南スーダンに自衛隊を派遣。治安悪化などにより、最終的には撤退した。イラク復興と南スーダンでは「日報問題」を引き起こした。しかし、管理の問題であって日本存続のための「国防の問題」ではない。
参考)以下はPKO活動の変遷 www.nippon.com
■改憲から解釈改憲へ
憲法改正を試みたが容易ではないと判断した日本は2014年7月、安倍内閣は「解釈改憲」に踏み切った。集団的自衛権行使を容認する閣議決定を下した。
<参考>
・知ってはいけない 矢部宏治
・知ってはいけない2 矢部宏治
・クウエート感謝広告問題 - Jinkawiki
・PKO法制定・施行20周年 : 内閣府国際平和協力本部事務局(PKO) - 内閣府
・自衛隊イラク派遣 - Wikipedia
・自衛隊南スーダン派遣 - Wikipedia
・https://www.nippon.com/ja/currents/d00328/