バビロン捕囚後、ディアスポラ(民族離散)を続けたユダヤ人。
1948年にイスラエルが建国する。
しかし、建国およびその領土は、理解がややこしい。
古代ユダヤには全12部族がいたとされる。
「イスラエルの失われた10支族」は、歴史上、離散して行方不明となった全12部族のうちの10支族を指す。
ゆえに、イスラエル建国にあたって与えられた領土は古代ユダヤの民に対してではない。建国時の「ユダヤ教徒」に対して与えられた時間軸がズレたものである。
また、イスラエル建国をもってエルサレムは3つの宗教の聖地となった。
人類が乗り越えるべき難問が1つの土地に集約されていく。
次の流れで紹介していく。
・アラブ連盟
・イギリスの委任統治の終了期限
・パレスチナ分割案とイスラエル建国
・第一次中東戦争
・パレスチナの領土減少
・3つの宗教の聖地「エルサレム」
・3つの宗教の神様は同じ
・死海
・死海文書(しかいぶんしょ/しかいもんじょ)
・イスラエル大使館の移転
■アラブ連盟
1945年3月、アラブ7か国が、共通の利害一致から「アラブ連盟」を結成した。エジプト王国が主導した。エジプト、イラク、トランスヨルダン、サウジアラビア、イエメン、シリア、レバノンの7ヵ国が最初の加盟国となった。
■イギリスの委任統治の終了期限
パレスチナにおけるイスラエルの建国と第一次中東戦争
第一次世界大戦後、パレスチナはイギリスの委任統治となった。
16世紀依頼パレスチナを納めていたオスマン帝国にとって代わった。先住のパレスチナ人と移住したユダヤ人との間で衝突が繰り返された。イギリスにパレスチナの統治の終了期限が迫る。イギリスは設立されたばかりの国連に問題を委ねた。
■パレスチナ分割案とイスラエル建国
国連は「パレスチナ分割案」を1947年に決議した。分割案の内容は次の通り。
・パレスチナを分割する
・ユダヤ人とパレスチナ人の二つの国家を建設する
・聖地エルサレムを国際管理下に置く
この分割案はユダヤ人にとって有利な条件となった。
ユダヤ人は「バルフォア宣言」が一部認められたと歓迎。その内容はイギリスが1917年、ユダヤ人に対しパレスチナ国家の建設を認めるもの。パレスチナ分割案に対し、ユダヤのほか、アメリカ、ソ連なども支持した。そして1948年5月に「イスラエル」が建国された。
■第一次中東戦争
アラブ連盟はこれに反発し、イスラエルに侵攻した。パレスチナ戦争(第一次中東戦争 /1948-1949 )が起きた。イスラエルはイギリス、アメリカの支援を受ける。イスラエル軍が勝利してイスラエル建国が既成事実化された。
■パレスチナの領土減少
パレスチナは現在、
ヨルダン川西岸地区:東をヨルダンに接する地区
ガザ地区:西を地中海、南をエジプトに接する地区
の2地区にわかれる。
領土の推移を時系列で示すと
・第二次世界大戦終結以前:100%
・1946年 / 英委任統治時代:94%
・1947年 / 国連分割決議後:43%
・1948年-1967年:25%
・2012年:8%
となる。
■3つの宗教の聖地「エルサレム」
エルサレム旧市街と、その城壁群が「世界遺産」として登録されている。世界中から多くの巡礼者、観光客が訪れる。その約1km四方の城壁で囲まれた「エルサレム旧市街」に、ユダヤ、キリスト、イスラム教の3つの聖地が共存する。各宗教のシンボル的な建物は次の通りである。
①岩のドーム:
イスラム教の聖地である。黄金色のドームの屋根が特徴。イスラム教の聖地にはメッカ、メディナがある。ともにサウジアラビアに存在する。
②嘆きの壁:
ユダヤ教の聖地である。ヘロデ大王時代のエルサレム神殿のうちローマ軍に破壊されたが部分的に現存する、西側の壁である。
③聖墳墓教会:
キリスト教の聖地である。イエス・キリストが十字架にかけられたゴルゴダの丘とされる場所に建つ。建物内部にはイエスの墓、モザイク画などがある。
■3つの宗教の神様は同じ
イスラム教ではその神名を「アッラー」という。
ユダヤ教ではその神の名を「ヤハウェ」という。
キリスト教では神は「三位一体」と言われている。父なる神、その神の子がイエス、そして聖霊である。
これらの神は名前は違うが同じ神を示す。イメージは「創造神」である。なお、ギリシャ神話、日本神話は多神教的であり、人間界で活躍した英雄が神格化された神も登場する。
■死海
イスラエル、ヨルダンの国境沿いに位置する塩水湖である。塩分濃度が高く、腐食が進みにくい。また、人が湖に入ると浮いてしまう。これは比重が関係する。死海は比重が1.33と通常より大きい。これに対して人間の比重は0.93~1.01。よって比重の軽い、人間のほうが浮く。
そのほか、死海の特徴をいくつか挙げる。
・海抜は-400m、最深部は-426mといわれ、地上で最も低い地点にある。
・面積は605km2。なお東京23区は627km2、琵琶湖は約670km2。
・水瓶のようになっており、また、近年水量が減り続けている。1960年でマイナス395mだったものが2010年頃でマイナス422m。1年あたりおよそ1mずつ減っている。
水際が1km以上後退した場所もあり、これが続けば2050年までに死海が消滅するとの試算も。
■死海文書(しかいぶんしょ/しかいもんじょ)
1947年以降、死海周辺のクムラン洞窟などで発見された972の写本群の総称。「死海」+「文書」でコワいイメージだが、塩分の多い湖から出てきた古代ユダヤの文書。内容は主に旧約聖書(ヘブライ語の聖書)、聖書関連。3つの宗教の原典・旧約聖書に関わる、歴史上としても大きな発見である。死海は腐食も進みにくく、水位が下がってきている。死海文書の他にも、湖の底に沈んでいるものがないかと空想は膨らむ。
■イスラエル大使館の移転
2018年5月14日、アメリカ・トランプ米大統領はイスラエル大使館をテルアビブからエルサレムへと移転した。これは1995年の「エルサレム大使館法」に基づくものである。大使館は基本的にその国の首都におかれるため、その移転は、国家が物理的にも首都と承認したことを意味する。クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、オバマら、歴代の大統領はこの大使館移転を先延ばしし続けてきた。しかしトランプ氏は娘・イヴァンカ氏の夫、ジャレッド・クシュナー氏の影響もあったのであろうか。クシュナー氏は大統領上級顧問も務めた、敬虔なユダヤ教徒である。
<参考>
・バビロン捕囚
・ディアスポラ - Wikipedia
・アラブ連盟 - Wikipedia
・パレスチナ分割案/パレスチナ分割決議
・バルフォア宣言
・パレスチナ国 - Wikipedia
・パレスチナ問題 TOP|パレスチナ子どものキャンペーン
・第一次中東戦争 - Wikipedia
・焦点:米大使館移転で中東緊迫化、「エルサレム問題」とは何か | ロイター
・トランプが開けたパンドラの箱、エルサレム大使館移転問題の行方 Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン)
・イツハク・ラビン - Wikipedia
・ジャレッド・クシュナー - Wikipedia
・エルサレムをイスラエルの首都とするアメリカ合衆国の承認 - Wikipedia