シン・ニホンシ

日本の歴史を新しい視点でとらえ、検証し、新しい未来を考える

77.EV車の推進はいつか来た道、銀行のバーゼル規制の再来か

時は1989年のバブル崩壊寸前。日本は世界ナンバーワンの経済大国であった。そのとき、いったい何が起きていたのだろうか。また現在ではクルマの電気自動車化が進んでいる。それを推進しすぎると経済にはどんな影響があるのだろうか。
目次
・世界の時価総額ランキング
・ゲームチェンジ
・BIS規制
・世界の時価総額ランキング
・車産業のゲームチェンジ
・電気はどこでつくられているのか
・カリフォルニア規制
トヨタの戦略
・家電化するEV
・今後の経済策

■世界の時価総額ランキング
1989年時点の世界の時価総額ランキングは次の通りであった。ほぼ日本の銀行が占めていた。
・1位:NTT
・2位~5位、7位:日本興業銀行住友銀行、富士銀行、第一勧業銀行、三菱銀行
・6位:IBM
・8位:エクソン
・9位:東京電力
・10位:ロイヤル・ダッチ・シェル
・11位:トヨタ自動車
・12位:GE

■ゲームチェンジ
欧米諸国は自分たちが一番になれない場合はルールチェンジを行う。オリンピックのルール改正、柔道やスキーでは特に顕著である。もっともらしい理由を添えてることに長けているからだ。日本人はそういうのに得意ではない。日本がルールを攻略して追いついて慣れてくるころにはもうルール変更を企画している。
ただ、ルール変更が日本に有利に働いく場合も。例えばサッカーで、2022年のワールドカップのとき。ヨーロッパ諸国はカタール開催で中東の笛、人為的な審判によるルールチェンジを恐れていた。このため、サッカーのVAR(ビデオアシスタントレフェリー)の導入を決めていた。結果、VARが活躍。三苫薫「1ミリの奇跡」を生んだ。日本にとっては好都合だった。欧米諸国はルールをつくる。そして破る。日本はルールに従う。

■BIS規制
1987年7月、経済、正確には銀行のお金の貸し出しルールのチェンジが行われた。BIS規制である。BISとは国際決済銀行(Bank for International Settlements)のこと。この機関が、預金者の保護を前提とし、銀行の自己資本比率の改善のため規制のためのルール作りを行った。具体的には、銀行として備えるべき損失額を見積もらせた。リスク資産額という。そして自己資本でリスク資産をまかなえるようにした。その対応には自己資本を増やすか、リスク資産を減らすという対策がとられる。その比率をバーゼルIでは8%と定めた。銀行が倒産した場合の預金者保護を目的としている。だから、まっとうな話ではある。ただ、日本は担保を取りながらお金を貸していたので、それがやりづらくなった。株価や不動産のバブル、お金稼ぎに明け暮れたその時代が良かったかどうかは別として、この規制によりバブルを崩壊させた。
※海外拠点を持たない場合は自己資本比率は4%とされた。
※日本のバブル崩壊は1991年
※日本では1993年3月末から適用された

■世界の時価総額ランキング
2022年6月時点ではランキングは
・1位:サウジアラムコ
・2位:アップル
・3位:マイクロソフト
・4位:アルファベット
・5位:アマゾン
・6位:テスラ
・7位:バークシャー・ハサウェイ
・8位:ユナイテッドヘルス
・9位:ジョンソン&ジョンソン
・10位:テンセント
・11位:メタ・プラットフォームズ
・12位:台湾セミコンダクター
である。一位はサウジアラビアの石油会社。それ以外はアメリカのIT企業。巨大ITプラットフォームなどの情報を制する会社が強い。昔日本が得意だった金融や重厚長大産業から、現在は情報産業にシフトしている。しかしGAFAMのような企業は日本では育ちにくいから、なかなか勝ちづらい

■車産業のゲームチェンジ
エンジン車はガソリンを燃料として走る。これに対して電気自動車(EV)では、モーターを回し、電気をエネルギーとして走らせている。だからCO2を排出しない。脱炭素につながる。地球にやさしい。気候変動対策として有効。というもだ。果たしてほんとうにそうだろうか。

■電気はどこでつくられているのか
ガソリンが電気自動車にとってかわると電力はどうなるのだろう。その充電は、家庭や移動先の充電スポットで行う。その電気はどこでつくられているのだろう。実態は、ガソリンを燃やして、火力発電でつくらている。だから個人で給油されるガソリンが、火力発電で燃やす石油に転嫁されるにすぎない。いま年間400万台くらいの車が売れている。それが全てEVになると、10%~15%程度電力が不足するとのことだ。原子力発電所でいうとプラス10基分、火力発電所でいうと20基が必要となる。

■カリフォルニア規制
アメリカ・カリフォルニア州での新規制が注目されている。カリフォルニア州は米国最大の自動車市場である。また、先進的な環境政策で全米をリードする存在として知られている。そのカリフォルニア州において大気資源局が2022年8月に発表した新規制によれば、2035年までに同州で販売する車を全て温室効果ガスを排出しない「ZEV」にするとのことだ。このZEVには、EV、FCV(燃料電池車)、PHV(プラグインハイブリッド車)は含まれるがHEV(ハイブリッド車)は含まれない。このHEVが日本メーカーが得意とする領域だ。だから日本にとって最も好ましいシナリオは、EV車に変わっていく過渡期の段階としHEV車の普及を経て段階的にEVに切り替わっていくという移行シナリオが好ましいのだが。なお現時点で電気自動車の航続距離には問題がある。普段使いとして100km圏内を行き帰りして家で充電して明日使うという使い方には適している。一方、旅行先で高速道路で移動するような長期の旅行や帰省にはいまのところ向いていない。

トヨタの戦略
トヨタはもちろん承知している。EV車、燃料電池車(FCV)の2本立てで進めている。EV車よりもFCVのほうが優れているが、こちらはまだ普及もしていない。水素ステーションも充実していない。どうEVとFCVの折り合いをつけながら対応していくだろうか。

■家電化するEV
クルマのパーツが家電製品のようになる。これまでエンジン車の技術が不要になっていく。そのため下請け会社など中小企業の仕事が少なくなっていく可能性がある。リスキリングや雇用の確保が必要である。また、テスラやを始めとするITやデザインに強い企業が新規参入してくる。

■今後の経済策
・欧米に負けないクルマづくりをする。
 例えば、電気自動車、燃料電池車などで負けない車種、デザインを開発する
・従来の仕組みの延長線上にある新たな需要を開拓する
 例えば、小回りのきく「C+Pod」・電動ミニカーは道路幅の狭い日本では重宝される。また空飛ぶクルマなども夢があり投資を得られやすい事業である。
・受け皿となる新たな産業、新規ビジネスを創出する
今後ますますの企業努力、そして国家戦略が必要となる。

<参考>
国内・全世界の時価総額ランキング…時価総額が高い会社に投資するのは安心か?|資産形成ゴールドオンライン
BIS規制|証券用語解説集|野村證券
カリフォルニアの新規制で加速するEV大競争時代 日系自動車メーカーの反転攻勢に注目するワケ | 三井住友DSアセットマネジメント
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