夏のセミの声。秋のスズムシの声。日本人は虫の声で季節を感じているといっても過言ではない。でもその虫の出す音を「声」として感じられるのは実は「日本人」と「ミクロネシア人」。どういうことだろうか。そしてそれはなぜなのだろう。次の流れで紹介する。
・「ほかの人には聞こえていない」ことに気づいた角田教授
・右脳と左脳の役割の違い
・どちらの脳を使って虫の音を聞くのか
・日本とミクロネシア人の共通点は何なのだろう
■「ほかの人には聞こえていない」ことに気づいた角田教授
角田忠信教授が1987年1月、キューバで開催された国際学会に参加した時の出来事。虫の声が会場周辺に響いていることに気づいた。教授はそのことに興味をもった。教授はなんという虫かと周囲の人に尋ねた。しかし、他の人にはそもそもその音が聴こえていなかった。そして夜にパーティーが開催された。パーティーに参加した教授はそのときも虫の音が気になり、同様に周りの人に尋ねてみた。しかし、やはり虫の声が聴こえている人はいなかった。
■右脳と左脳の役割の違い
人間の脳は「右脳」と「左脳」とに分かれている。そしてその情報処理の仕方が異なるという。
左脳では
・言語脳
・人間の話を理解するなど論理的、知的な処理をする
一方、右脳では、
・音楽脳
・主に音楽や機械音、雑音などを処理をする
という特徴がある。
■どちらの脳を使って虫の音を聞くのか
ここで「虫の音」を「声」として聴けるかどうかは、どちらの脳で聴くかが分かれ道となる。角田教授の実験によれば、日本人とポリネシア人は、虫の音を左脳、「言語脳」で聞いている。このことから虫の音を「虫の声」、「言語」として聞いている。一方、西洋人は虫の音を右脳、「音楽脳」で聞いている。このことから虫の音をそのまま「音」としてとらえている。この違いは「使用している言語」の特性の違いによって生じていると考えられる。よく日本語を話すから日本人になると言われる。それはこの左脳、言語脳で処理しているということが影響しているのでしょう。
■日本とミクロネシア人の共通点は何なのだろう
日本人のルーツは多数あり、複雑である。そしてミクロネシアとも遠く離れている。
ミクロネシアはグアムやパラオ、パプアニューギニアとも近い国だ。日本は古代より海洋国家だったからであろうか。それともなんらか共通の祖先を持つのでしょうか。答えはわかりませんが、そういうことに思いをめぐらせてみるのも楽しいかもしれません。
なお、角田氏の研究に関連した論文がネット上で公開されています。
・発生聴覚フィードバックの中枢調節の生理的解明
角田氏の主張を証明する傾向が示されています。
↓からダウンロードできます。
https://kaken.nii.ac.jp/en/file/KAKENHI-PROJECT-26350600/26350600seika.pdf
・虫の音が人の感性に及ぼす影響
↓からダウンロードできます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjske2008/8/4/8_1137/_pdf
参考②↓