日本は食料自給率が低いと言われている。ほとんどの人がそう思っているはずだ。しかし、果たしてほんとうなのだろうか。実態はどうだろうか。自給率が低いとすればスーパーの精肉コーナー、野菜コーナーは外国産だらけのはずである。実際は国産がメイン、外国産はサブではないのだろうか。このギャップは何からきているのか。実は計算式にカラクリがある。
・生産額ベースでの農業生産額
・カロリーベース総合食料自給率
・摂取カロリーと供給カロリーの乖離
・生産額ベースで自給率を計算すると?
・農業人口の減少 = 農業の衰退は幻想か
※記事作成にあたって浅川芳裕氏の著書「日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率」を参考としました。
■生産額ベースでの農業生産額
まずは生産額を確認してみる。下記サイトから2021年度の世界各国の農業生産額をランキングが確認できる。ランキングは中国、インド、アメリカと続いている。日本は11位で、9位のロシア、10位のオーストラリアに次ぐ順位である。意外に11位と高順位であることがわかった。しかしそれでも自給率が低いとはどういうことなのだろうか。
■カロリーベース総合食料自給率
「日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 ※5位は出版当時か?」によればカロリーベースの自給率の計算式が紹介されている。以下より計算できるという。
①自給率 = ②1人1日あたり国産供給カロリー ÷ ③1人1日あたり供給カロリー
さらに②、③は下記に分解できる。
②の分子:( 国産 + 輸出 )供給カロリー ÷ 人口
③の分母:( 国産+ 輸入 - 輸出)供給カロリー ÷ 人口
なお「自給率」の定義は「国内で供給される食料のうち国産でどの程度まかなえるか」である。上記計算式では、2008年は41%となるらしい。
■摂取カロリーと供給カロリーの乖離
違和感を抱く原因のひとつに摂取カロリーとの違いがある。よく栄養計算や、ファミレスなどでメニュー表にかかれているのは摂取カロリーである。上記③の分母は「供給カロリー」であって「摂取カロリー」とは異なる。ちなみに厚生労働省の2005年調査では「摂取カロリー」は1904kcal。これに対し「供給カロリー」は2573kcalとなるそうだ。
この差の約700kcalはコンビニ、ファストフード、ファミレスなどの廃棄分、家庭での食べ残し分であるという。お腹の中に入らない分までもが分母に入って計算されてしまう。さらには分子の国産供給カロリーには、全国に200万戸ほどある農産物の販売のない、自給自足的な農家の米や野菜を含まないという。ゆえに実際の供給力はもっと高いはずとのことが書籍で指摘されている。
■生産額ベースで自給率を計算すると?
「生産額」での自給率を計算すると自給率は実態に近づく。その計算式は
自給率 = 食料の国内生産額 ÷ 食料の国内消費仕向額( 国内生産額 + 輸入額 + 輸出額 )
である。2007年時点では、分子が約10兆円、分母が約15兆円。自給率は66%になるとのこと。
■農業人口の減少 = 農業の衰退は幻想か
技術革新によって農業生産者一人あたりの供給量は向上している。収穫時の不良品をわけたり、収穫時期を予測、甘みなどの等級づけを自動判定するAIも開発されつつある。だから農業人口が減っているからといって農業が衰退しているわけではない。このことも認識と実態とのギャップを生んでいる。
<参考>
・日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 浅川芳裕