シン・ニホンシ

日本の歴史を新しい視点でとらえ、検証し、新しい未来を考える

57.現在も残る国家安全保障とエネルギー資源確保の課題

自国の領土や国民は原則自国で守っていくのが通常である。また日本はエネルギー資源などが乏しいため、その調達先を分散させながら確保する必要がある。その上で、現在も残っている米軍、国家安全保障、エネルギー資源調達などの問題を次の流れで紹介。
・1.日本の空の主権回復
・2.連邦議会承認してから攻撃・防衛するまでのタイムラグ
・3.安保条約の適用範囲
・4.指揮権の問題
・5.エネルギー資源、鉱物資源の調達先
・6.スエズ運河でのコンテナ船の座礁事故

■1.日本の空の主権回復
 横田基地が影響し、通称「横田空域」と呼ばれる、航空機が通れない場所、高度が存在する。自国でありながら、自由に飛ぶことができない。羽田などから飛び立つ飛行機が、急上昇、迂回を求められるのはこの空域が存在するためである。実際は全国各地の基地上空に渡る。
↓イメージで理解できるため、下記の図を参照頂きたい。 

www.asahi.com

■2.連邦議会承認してから攻撃・防衛するまでのタイムラグ

 日本およびその周辺で有事が起きた際、アメリカ軍を動かすためには
 ・アメリカ大統領の意思指示
 ・連邦議会の承認
が必要となる。つまり、連邦議会承認を得るまでに一定の時間を要するということだ。その時間を持ちこたえるためには、日本独自の戦略、防衛力が必要である。イージス艦や対地空ミサイル・PAC3などの配備はこのためである。

■3.安保条約の適用範囲

 日米同盟と称している安保条約はアメリカ側からみたとき、
 ・アジア極東軍事戦略の一環にすぎず、日本のための同盟ではないのではないか
 ・同盟関係のように明文化されていない
といった問題がある。たしかにこれまで両国は信頼を形成し、確立されてきた同盟関係ではあるが、現状、アメリカはどのような立場をとるのか。「日米安保条約第6条」において日本と極東の平和安全維持に関する対応が記載されているが、次のケースでも「第6条」の行動範囲なのか。 
・日本が直接侵略された場合
 日本と極東の平和維持の範囲内で対応可能か。
・周辺で有事が起きた場合
 アメリカ大統領が変わった際、政府は台湾有事などが日米安保の適用対象かどうかを確認している。この根拠が第6条と思われる。
 2022年のロシアのウクライナ侵攻では、アメリカや欧米は2023年現在「支援」の立場をとる。たしかに”直接”の形をとらないのは、ウクライナNATOに加盟していし、同盟国や軍事機構への加入がないということもあるが、何よりも”自国の事は自国の軍隊でまず守る”というスタンスが明確化された。

■4.指揮権の問題
 指揮権に対する明示的な規定がない。ただ、「アメリカ軍が日本軍を指揮する」と言われている。そんなはずはない、合同演習を何度もしてきたではないか、と思われるかもしれない。しかし、それは海の上に一緒に軍艦を並べていただけだと言われている。 なお、実はこの問題に対して対応が行われている。ほんとうの意味で相互に支援できるようになったのは2015年の「平和安全法制」の整備からと考えられる。実践、緊急時ではいかであろうか。日米豪印の4か国の合同演習を2020年より行っているため、問題は解消されつつある。

■5.エネルギー資源、鉱物資源の調達先
原油の調達先
 エネルギー資源の調達を特定の国、地域に依存することは危険である。戦争や災害などの発生時にリスクとなる。そのため、広く調達先を分散しておく必要がある。 また、石油や天然ガスだけでなく、レアメタルといった鉱物資源の調達も重要である。 なかでも石油は重要である。2019年の原油海外依存度は99.7%である。うち中東からの輸入が88%を占める。中東以外ではロシアが5.4%、アメリカが2.2%、エクアドルが1.3%と多い。

・中東への依存度を下げるために
 中東で戦争が起きたとき、それ以外の地域での調達先が必要となる。ルートとしてほとんどがホルムズ海峡・エネルギー供給の大動脈を通る。ホルムズ海峡はペルシャ湾オマーン湾の間に位置する。イラン、サウジアラビアアラブ首長国連邦などの産油国と面している。原油、石油製品を合わせて日量約1700万バレルが行き交うという。

 中東への依存度を下げるため日本はロシアとも関係を築いてきた。2021年、日本からロシアへの
 輸入:1兆5431億円
 輸出:8624億円
である。 2009年から石油・天然ガスの開発事業「サハリン2」が始まり、液化天然ガスを輸入してきた。なお2009年からロシアに対して輸入超過となっている。

■6.スエズ運河でのコンテナ船の座礁事故
2021年3月に日本の会社が所有するコンテナ船が座礁事故を起こした。この事故は「スエズ運河」、地中海と紅海を結ぶルートでの発生であった。スエズ運河はアフリカとアジアを分断する人口海面水路であり、年間約1万9000隻が行き交う、海上交通の要衝とされる。事故ではコンテナ船が運河を完全に塞いだため、数百隻の船が立ち往生したとされる。この事故はひじょうに象徴的な事件と思われる。

<参考>
・日本人だけが知らなかった「安倍晋三」の真実
内閣官房 平和安全法制等の整備について
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/pdf/gaiyou-heiwaanzenhousei.pdf
日本の対ロシア貿易 | nippon.com
安定供給 | 日本のエネルギー 2020年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」 |広報パンフレット|資源エネルギー庁
海の物流、危機管理のカギを握る「チョークポイント」・・・スエズ運河での座礁事故を受けて | スペクティ(株式会社Spectee)