シン・ニホンシ

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71.クアッドとは何か

ニュースでも聞く、クアッド(Quad)。クアッドとは日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4か国が安全保障などで協力する枠組みのこと。英語で4を意味するクアッドから名づけたもの。このクアッドには中国の存在が大きく影響している。完全な対中包囲網ではなく「中国と利害関係のある国々における経済的、軍事的協力の枠組み」というとらえ方が正しいようだ。ここでは、クアッドを取り巻く背景や各国事情をみていく。
目次
マラッカ海峡
・中国のクアッド各国との衝突
・中国の南沙諸島への進出
・クアッドとは

マラッカ海峡
中国が一帯一路において海のシルクロードを完成させるとき。南シナ海を通ってマラッカ海峡を通りたい。なぜマラッカ海峡を通るのか。マラッカ海峡は、位置としてはマレー半島スマトラ島を隔てる海峡である。ここを抜ければインド、スリランカ、そしてスエズ運河へと向かうことができる。スエズ運河を抜ければヨーロッパともつながる。しかし、スエズ運河は海賊も出没する危険なエリアのため、運送航路としては避けたいルートでもある。それを回避するルートがある。陸路の「中国パキスタン経済回廊」である。これは一帯一路のインフラ事業のひとつ。パキスタンアラビア海沿岸ののグワダル港経由で中東と中国を結ぶというもの。2030年までに完成させる計画がある。完成すればそこから中東などに向けて船で運ぶことができるようになる。

■中国のクアッド各国との衝突
①インドの関係
中国とインドは国境問題で衝突が発生しており、係争地問題がある。インド北東部アルナチャルプラデシュ州タワン地区がそれにあたる。そのインドと敵対するパキスタンに対し、中国は軍事連携をするなど、協力関係を築いている。
②オーストラリアの関係
当初、中国とオーストラリアの関係は良好であった2014年には包括的・戦略的パートナーシップを締結、2015年には豪中FTAを成立させた。しかしこから関係は悪化する。中国からのオーストラリアに対する直接投資、内政干渉によって警戒感が高まった。また2020年時点でオーストラリアにおける中国を出生国者の人口は2.5%にまで達していた。中国のオーストラリアへの影響力が高まっていた。こうした中で、2020年の新型コロナウイルスの発生源をめぐる議論で対立が発生、関係が決定的に悪化した。

■中国の南沙諸島への進出
 中国は南沙諸島に進出しており、いくつかの場所で埋め立て作業を行っている。スービ(渚碧)礁上には既に軍事基地を建設している。他にも、エルダド礁やランキアム礁などで埋め立て作業を行っている。

■クアッドとは
「自由で開かれたインド太平洋」に向けて4国間で関係強化を目指す枠組みである。2004年に起きたスマトラ沖地震への対応で築かれた協力関係が発端となっている。そのような経緯の中でクアッドは安倍元首相が提唱した構想である。アメリカは、覇権を争っている中国をけん制したい。オーストラリアはエリア的には離れているが、進出を受けているため警戒したい。また、日米と関係も深い。インドは係争地があり軍事衝突も起きている。しかし決定的にはもめたくない。クアッド=対中包囲網と思われることには警戒している。他の3か国としては2021年時点の人口で14億人と中国に並ぶ大国、インドに参加してもらいたい。
以上から、各国の思惑が一致、以下の6つの分野で作業部会が立ち上がっている。今後はさらに進展していくと思われる。
・ワクチンをはじめとする新型コロナ対策
・気候変動
・宇宙
・サイバー
・インフラ
・重要・新興技術

<参考>
中国の広域経済圏構想「一帯一路」とは?各国のメリット・デメリットと日本の加盟の行方 - プルーヴ株式会社 
マラッカ海峡 - Wikipedia
中国、パキスタンと軍事連携強化 : 日本経済新聞
豪州と中国の二国間関係~豪中対立の行方~ : 財務省
中国による岩礁等の埋め立てに関する法的・地政学的観点からの考察: IISEの広場 | 国際社会経済研究所
フィリピンが懸念表明、中国が南沙4カ所埋め立てと報道 | ロイター
焦点:南シナ海人工島に中国の「街」、軍事拠点化へ整備着々 | ロイター
【視点】南沙諸島と尖閣諸島は違うのか? | HUB沖縄(つながる沖縄ニュースネット)
日米豪印首脳会合 | 首相官邸ホームページ