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72.日本とイギリスの準軍事同盟「円滑化協定」とは

2023年1月11日に英国を訪問した岸田首相は、リシ・スナク英国首相との間で「日英部隊間協力円滑化協定」への署名を行った。これは日英同盟なのだろうか。違うとすれば、どこが違うのかを理解できるようになる。

目次
・オーストラリアに続く円滑化協定
・円滑化協定とは
・共同訓練「マラバール」
・軍事同盟ではない
・武器の共同開発の動き
・まとめ

■オーストラリアに続く円滑化協定
2022年1月6日、日本はオーストラリアと円滑化協定を結んでいた。ゆえにイギリスとはオーストラリアに続く2か国目であった。

■円滑化協定とは
この円滑化協定の目的は、
・艦船の寄港
・共同演習
といった協力活動を行う際の「手続の簡素化」とされる。

■共同訓練「マラバール」
神奈川県横須賀市にて、2022年11月8日~11月15日の間に「マラバール」と呼ばれる日米印豪の共同訓練が行われた。もとはアメリカ海軍とインド海軍の間で行われていた訓練である。日本の海上自衛隊は2007年から参加した。オーストラリアは2020年から参加した。「共同訓練」を行う際の手続きを簡素化したり、事故やトラブルなどが起きてしまった際の地位協定を確立するのが「円滑化協定」である。

■軍事同盟ではない
円滑化協定は同盟ではない。同盟の場合は、片方が攻撃を受けた際、もう片方がかけつけてともに戦うという意義がある。それはメリットでもあるし、余計な戦争に巻き込まれるというデメリットでもある。円滑化協定は準同盟的なものである。訓練実施を目的とした同盟である。4国間で普段から連携しあい、抑止力を働かせていく。何かあった時は助け合うという協力関係である。

■武器の共同開発の動き
日本、イギリス、イタリアの間で、次世代の戦闘機を共同開発していくという発表が、2022年12月にあった。2035年頃に航空自衛隊のF2戦闘機が順次退役していく。その後継機を共同開発していこうという取り組みになる。メリットは、コスト削減、強力関係の構築である。また日本とは地政学的にも離れているから、敵対関係となりにくい。何かあった時は共通の仕様でつくられているためオペレーションもしやすい。

■まとめ
日本はクアッド各国との間で、主に海軍で共同訓練を行うための手続きを簡素化するため、円滑化協定を結でいる。

<参考>
日英部隊間協力円滑化協定の署名|外務省
日豪円滑化協定の署名|外務省
日米豪印の共同訓練開始式 4か国が連携強化を確認 横須賀|NHK 神奈川県のニュース
日米印豪共同訓練(マラバール2022)|海上自衛隊 〔JMSDF〕 オフィシャルサイト
【詳しく】次期戦闘機 日本・イギリス・イタリア 共同開発へ | NHK | 自衛隊
日印安全保障協力のこれまでの歩みとその背景 | 研究プログラム | 東京財団政策研究所