NATO、北大西洋条約機構とは何か。どのような歴史があったのか。そしてロシアも準加盟していた。ロシア視点でみたとき、旧ワルシャワ条約機構加盟国が次々とNATOに加盟し、ロシアに脅威もたらしたことがわかる。
・NATOとは
・NATOの設立の経緯
・西ドイツの加盟とソ連側ワルシャワ条約機構の結成
・フランスの反発
・冷戦終結によるNATOの変容
・ロシアの準加盟と取消
・1982年以後の加盟状況からみるロシアが感じる不安
・ウクライナ紛争
・ロシア・ウクライナ戦争
■NATOとは
・北大西洋条約機構、North Atlantic Treaty Organizasionの略
・1949年4月に結成された西側諸国の集団的軍事機構
・アメリカのワシントンで締結された北大西洋条約に基づく。署名地からワシントン条約と呼ばれることもある
・ヨーロッパ以外のアメリカ、カナダが加盟している
・当初12ヵ国が加盟して結成、現在は30ヵ国が加盟
■NATOの設立の経緯
下記5つにまとめる
１．1947年、アメリカは封じ込め政策を打ち出し、ソ連の勢力拡大による世界の共産主義化を防止しようとした
２．1948年2月、チェコスロバキアでクーデタが発生し共産党政権が成立した。これにイギリスは衝撃を受け、フランス、ベネルクス三国と「西ヨーロッパ連合条約」を結び共同防衛策を取った。この時点の加盟国はイギリス、フランス、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク。
３．1948年6月、アメリカ、イギリス、フランスが西ドイツの経済統合を目指し、通貨改革を実行した。ソ連はこれに対抗しベルリンを封鎖して対抗した。
４．東欧社会主義国は1949年1月、COMECON・経済相互援助会議を結成した。アメリカのマーシャルプランに対抗し東欧の結束力を強めようとする。COMECONは当初、ソ連、アルバニア、ブルガリア、チェコスロヴァキア、ハンガリー、ポーランド、ルーマニアの加盟だった
５．西欧同盟諸国は防衛力強化に迫られた。そこでアメリカに呼びかけ、北大西洋でソ連圏を包囲する軍事同盟網を構想した。1949年4月、西ヨーロッパ連合の同盟国に加えて12ヵ国で北大西洋条約を締結。アメリカ、カナダ、ノルウェー、デンマーク、アイスランド、イタリア、ポルトガルが加わる。
■西ドイツの加盟とソ連側ワルシャワ条約機構の結成
1952年2月にはNATOにギリシャ、トルコが加盟。
1955年5月にはドイツ(当時・西ドイツ)が加盟。
アメリカ、イギリス、フランスと西ドイツが締結した「パリ協定」に基づき、1955年5月には西ドイツが再軍備を認められてNATOに加盟する。これにソ連が反発、1955年5月、NATOに対抗し「ワルシャワ条約機構」を結成。冷戦中、NATO軍はソ連・ワルシャワ条約機構軍への抑止力として機能した。
■フランスの反発
フランスのド＝ゴール大統領はNATOを通じたアメリカのヨーロッパへの介入へ反発した。1966年7月、軍事部門から脱退する。北大西洋条約からは離脱しなかったが、NATO軍の足並みが乱れた。フランスはその後、1995年に部分復帰、2009年にNATO軍事機構に完全復帰した。
■冷戦終結によるNATOの変容
1989年12月の米ソ首脳によるマルタ会談により冷戦の終結宣言が行われた。そして1990年10月には東西ドイツが統一し冷戦が終結した。これをもってNATOの役割が大きく変容する。1990年にはワルシャワ条約機構との敵対を放棄。NATO存続の理由は統一されたドイツをNATOのスキームの中に組み込こんでおく、というものとなった。
■ロシアの準加盟と取消
2002年5月にはロシアの準加盟を承認した。この時点でのNATOの方向性はロシアも含めた安全保障の枠組みに拡張していくものと思われた。しかし、ロシアのプーチン政権は次第に反NATOに転換する。2014年にクリミア併合を強行した。ウクライナとの紛争が起こり、ロシアの準加盟が撤回された。ロシアはNATOの東方進出を警戒、不安材料となった。
■1982年以後の加盟状況からみるロシアが感じる不安
旧ソ連圏諸国（旧ワルシャワ条約機構加盟国）も次々と加入していったことはロシアに脅威を与えた。以下に1982年以後の各国の加入時期を示す。
1982年5月：スペイン
1999年3月：チェコ、ハンガリー、ポーランド
2004年3月：エストニア、スロバキア、スロベニア、ブルガリア、ラトビア、リトアニア、ルーマニア
2009年4月：アルバニア、クロアチア
2017年6月：モンテネグロ
2020年3月：北マケドニア
現在は全30か国が加盟中。
■ウクライナ紛争
2014年2月、ウクライナで親ロシア政権が崩壊、これを受けてロシアがウクライナ南部のクリミア半島に侵攻、ロシアに編入した。
■ロシア・ウクライナ戦争
2022年2月、ロシアはウクライナに攻撃を開始した。2022年にはフィンランドとスウェーデンがNATO加盟を申請。ウクライナもゼレンスキー大統領が加盟を表明している。
＜参考＞
・北大西洋条約機構／ＮＡＴＯ
・北大西洋条約 - Wikipedia
・封じ込め政策
・西ヨーロッパ連合条約／ブリュッセル条約
・経済相互援助会議／コメコン／ＣＯＭＥＣＯＮ
・マルタ会談
・北大西洋条約機構（NATO）｜外務省
・ＮＡＴＯ、ロシアと対決すれば「待っているのは破滅」…ウクライナ軍兵器の欧米化支援へ : 読売新聞オンライン
・ロシアの安全保障条約草案 - 化学業界の話題
・クリミア自治共和国 - Wikipedia
