中国は「一帯一路」という、現代版のシルクロード構想を実施している。これは経済圏構想でもあり、覇権国家を目指す中国にとっての戦略でもある。現在、中国が取っている戦略を13のキーワードから紹介、中国の特徴をつかむ。
目次
中国の特徴
①中華思想
②朝貢外交
③易姓革命
④現在の政治形態は専制主義的
戦略
⑤対アフリカ投資
⑥AIIB
⑦一帯一路戦略
⑧債務の罠
⑨サラミ戦術
⑩海亀(ハイグイ)
⑪千人計画
⑫中国版GAFA、「BATH」
⑬アリババのCityBrainはテクノロジーの極みか、それともAI監視社会の実現か
■中国の特徴
①中華思想
中華が世界の中心であり、その文化や思想は神聖なものであるとする思想。
②朝貢外交
周辺国の君主が中国の皇帝に対し、貢ぎ物を捧げる。そして皇帝側は「たしかに君主である」と認め、恩賜を与えるという構図の外交である。主に前近代の中国を中心とした貿易形態である。リターンのほうが多いとされる。
③易姓革命
中国では王朝が交替することを易姓(えきせい)革命という。王朝の交代を正当化する理論でもある。特徴としては王朝が変わるため、歴史の連続性が保たれにくい。「易姓」の意味は、王朝の支配者の姓がかわる(易る)こと。「革命」は天の神(天帝)の意志(命)がかわる(革る)ことを意味している。
④現在の政治形態は専制主義的
専制主義をとる場合は、自らが歴史的にも軍事面においても強国であることを自負、あわせて国民の強い支持を確保しようとする傾向がある。
■戦略
⑤対アフリカ投資
中国の対アフリカ輸出額は10兆円規模。日本とアフリカの貿易は輸出で約9000億円、10分の1以下。アフリカ進出の最大の目的は「資源の確保」とされる。経済成長で石油や鉱物、レアメタルなどの資源不足が課題となり、2003年頃より戦略的に進出した。
⑥AIIB
アジアインフラ投資銀行。国際開発金融機関の一つである。中国の国家主席・習近平氏が2013年の10月のAPEC首脳会談において提唱し、2015年に正式に設立された。創設メンバーとしては57か国で発足、2021年12月時点で103か国・地域が加盟中。なお日本、アメリカ合衆国は参加を見送り中である。これは日米はアジア開発銀行(ADB)を主導している。AIIBは、このADBで賄いきれないアジア地域のインフラ整備に関して資金の補完を目的とするとされているが、実態は中国が進める「一帯一路」が背景にあるとされる。
⑦一帯一路戦略
習近平国家主席が2013年に打ち出した構想。アジアとヨーロッパを「陸路」と「海上航路」の両方からつなぐ。これより物流ルートをつくって貿易を活発化させ、経済成長につなげるというもの。過去、中国では中国とヨーロッパをつなぐ「シルクロード」が存在していた。一帯一路は現代版のシルクロードである。陸路では、中国とヨーロッパを鉄道で結ぶメインルートのほかにも5本のルートがあり回廊と呼ばれている。航路では、公海上は航海がフリーであるため港の存在が重要となる。中国は港の建設への融資や、運営権を握るなどし、使用の自由を確保しようとしている。
⑧債務の罠
借金漬け外交、債務の罠、債務トラップともいわれる。インドの地政学者・ブラーマ・チェラニーによって、中国の一帯一路構想と関連づけて用いられた。租借地、港湾権、鉄道権、空港権など、地政学上の権利を債務国側から合法的に取得する。代表例は中国のスリランカへの融資。
⑨サラミ戦術
大きなサラミをスライスして1枚だけとっても何ら変化がないように見える。それを何度も行い、衝突が起きない程度で少しずつ獲得していく戦略をサラミ戦術という。日本では、尖閣諸島や、中国機による領空侵犯・自衛隊機のスクランブル発進における防空識別圏の確認にみられる。なお諸問題に対して「遺憾砲」は効果がないという意見もある。しかし抗議をしないということは「抗議がなかった」「領土問題に関心がない」という意思表明となる。よって遺憾の表明は意味があると言える。
⑩海亀(ハイグイ)
中国出身者が、欧米など海外の一流大学で教育を受けたり、外資系企業でキャリアを積んだあと、再び故郷の中国に帰って活躍するというもの。単なる"高知能者"のUターン現象、とも言えるかもしれない。
⑪千人計画
中国の海外ハイレベル人材招致計画。日本政府は、この研究者のリストに日本人研究者が44人関与していたため、規制を強化した。
※明治時代の「お雇い外国人」の中国版とも言える。ただし、現代は営業秘密、特許権があるため、程度問題、ないしは研究者の倫理や企業倫理の向上が求められるのでは。
⑫中国版GAFA、「BATH」
巨大IT企業の代表の頭文字をとってGAFAというが、この中国版を「BATH」という。
Baidu:バイドゥ
Alibaba:アリババ
Tencent:テンセント
Huawei:ファーウェイ。
Xiaomi:シャオミーを入れて「BATX:バットエックス」と呼ばれることも。
⑬アリババのCityBrainはテクノロジーの極みか、それともAI監視社会の実現か
中国政府は、監視カメラからの映像を収集、ドローンや自動運転車などから得られる映像や情報の収集、都市を管理するAI「City Brain」で大量のデータをつなぎ合わせて補完を行い、街全体の映像を秒単位で更新する技術を実現しようとしている。住んでいる住民にとっては実際のところどうなのだろうか。ハイテクですごいのだろうか、それともAI監視社会で恐ろしいと感じるのだろうか。
■感想
13個のキーワードから特徴をとらえた。個人的には一帯一路の陸ルートが5本もあるとこに驚いた。また「中国ラオス鉄道」のように日本でいう都心環状に対する東北道、関越道、磐越道のような支線をつくり中国とをつなぐ構想も、経済や物流戦略としてよく練られていると感じた。
<参考>
・中華思想 - Wikipedia
・朝貢 - Wikipedia
・易姓革命 - Wikipedia
・ナイロビ新幹線を中国企業が受注した驚愕の理由 | アフリカ | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース
・アジアインフラ投資銀行 - Wikipedia
・アジア開発銀行 - Wikipedia
・1からわかる!中国「一帯一路」ってなに?|NHK就活応援ニュースゼミ
・借金漬け外交 - Wikipedia
・スリランカの経済危機の背景:中国の債務の罠なのか? | nippon.com
・わが国周辺の「空」の状況|航空自衛隊の役割|航空自衛隊について|防衛省 [JASDF] 航空自衛隊
・千人計画 - Wikipedia
・【独自】中国「千人計画」に日本人、政府が規制強化へ…研究者44人を確認 : 読売新聞オンライン
・中国の「全てを監視するシステム」はAIによってどのような進化を遂げるのか? - GIGAZINE
・アリババのスマートシティ戦略「城市大脳(シティブレイン)」で今できること(山谷剛史の中国から学ぶITトレンド)|ビジネスブログ|ソフトバンク