シン・ニホンシ

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75.巨大IT企業の租税回避とデジタル課税

GAFAMなどの巨大IT企業が市場を独占、節税対策として租税回避を行ったため、課税問題を引き起こした。ここでは巨大IT企業の問題点と、デジタル課税ルールがつくられるまでをみていく。
目次
・巨大IT企業のサービス
・巨大IT企業が引き起こした問題
・各国の対策
・企業が国家のようになるとどうなる?
タックスヘイヴン

■巨大IT企業のサービス
例えばAmazonなら、最初は書籍などの販売が中心であったが今では、
AWSといたITプラットフォーム
・AmazonPrimeなどのエンタテイメントのサブスクリプション
などのサービスを展開している。またデータが集積するため、
クラウドの利用にかかる料金の徴収
・データ分析サービス
も行っている。
Googleでは、
検索エンジン
YOUTUBE
Android 
などによる広告配信のアルゴリズムの変更が企業や個人の収入に直結する。また、スマートフォンにプリインストールされるアプリは、例えばGoogleのサービスのみのインストールにとどまれば、他のサービスの選択が狭まり、独占を引き起こしやすくなる。

■巨大IT企業が引き起こした問題
1.市場の独占状態:

独占状態となりやすい。またAmazonを例とすれば、便利すぎるがゆえに、既存のリアルな書店が街から消えてしまう。

2.下請け業者の圧迫:

配送に関して、配送料を安くするなどし、結果配送を担当する会社および下請けの会社が数量×単価で1件あたりいくらで給料が決まるため、長時間労働を強いられることになる。YOUTUBEのコンテンツ制作にも同様の構造がみられる。それらの結果、巨大企業はますます儲かり、コンテンツの作成会社、下請けの会社の給料があがらない結果となる。

3.課税
GAFAMの本国は日本ではないため、それらの利益が越境するという問題がある。紀伊国屋ジュンク堂や、街の本屋で書籍を買えば、日本国内の会社が潤って国内でお金が循環する。しかしAMAZONで買えば、AMAZONにだけ利益がいくことになる。

4.製造業でない
トヨタなどのグローバルな企業でも問題の構造は同じではないかという意見があるが、それは異なる。巨大な製造業では、たいていは現地で雇用するため(不買運動などの回避の側面もある)、ノウハウも現地にたまるし、また製造コストとなる従業員への給料(販管費部分)では現地が潤う。製造業では「モノ」が見えるため、現地政府からの関税による規制、不買運動などの貿易摩擦を回避するため、さまざまな工夫がとられてきた。

5.課税がしにくい
通常の製造業では現地の法人が、現地の自治体や国に対して税金をはらう。しかしインターネットを介したグルーバル企業の場合、十分な課税がされにくい。

6.GAFAの租税回避
 GAFAは低税率国やタックスへイブン(租税回避地)に企業の本籍を帰属させ、税金対策を行っている。ゆえに、アメリカの企業だからといって、必ずしもアメリカに対して税金を払っているというわけではない。

7.ニューリッチの実態
GAFAやニューリッチの実態が書籍で描かれている。「ザ・ニューリッチ―アメリカ新富裕層の知られざる実態」ではニューリッチはもはや国家と同様の権力を持つということが示されている。例えばだが、お金や経費でセキュリティ会社を警備員として雇えば軍隊のような組織となる。また、テスラのように衛星を運営すれば、衛星画像で軍事的な監視もでき、衛星画像提供サービスはまさに軍事産業である。

■各国の対策
そこで、各国が対策を取り始めた。OECD経済協力開発機構)加盟の国において、国際課税を強化するルール作り、その実施が始まる。2023年、各国共通で法人税率を15%とするものだ。公平な課税、およびそれが日本など現地に配分されて、一般市民に還元されていくことが望まれる。

■企業が国家のようになるとどうなる?
企業が国家のようになればいいではないか、という意見があるかもしれない。素晴らしい仕事、福利厚生などを提供していくとか。そのほうが意思決定が早いかもしれない。日本で言えば、ウーヴンシティがその実験都市となるかもしれない。しかし、韓国ではFTAの結果サムスンが巨大となり、この企業に国家が依存、スマホなどの国際競争の流行り廃りに敗れれば国家が転覆してしまうという事態になりかねない。やはり企業は企業の役割がよいのでは。

タックスヘイヴン
タックスヘイブン法人税所得税の税率がゼロまたは著しく低い国や地域のこと。ケイマン諸島パナマがこれにあたる。なお、シンガポール法人税率は2019年時点では17%とされる。この場合、本国・シンガポールと子会社・日本の商流と価格を調整して利益を多く発生させる。
※日本は23.2%、アメリカは21%。
※消費税を導入し、法人税下げたのは国際競争を意識していると考えられる。公言はされないが。企業が消費税分くらい給料上げてくれれば万事解決、しかしそうはうまく企業が動かない。

<参考>
・お金の流れでわかる世界の歴史 大村 大次郎
国際課税強化 巨大IT企業を網の中に|【西日本新聞me】
巨大IT企業と税制――課税へ当局の知恵問われる | 研究プログラム | 東京財団政策研究所
タックス・ヘイヴン - Wikipedia
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