シン・ニホンシ

日本の歴史を新しい視点でとらえ、検証し、新しい未来を考える

76.国債発行によって民間にお金が回る仕組み

原油価格の高騰問題などもあり貿易赤字に転落した日本。しかし原則は経常的な貿易黒字国である。また消費においても節約志向で浪費しない、貯蓄において2000兆円でうち半分が預金として眠っているという。それでも豊かにならないのはなぜのか。
目次
・消費税の導入と法人税の関係
・失敗している理由
・失敗した結果
・そもそもあまり財政赤字は問題ない
国債の発行は民間にとって好ましい
国債を多発しても民間への影響はない理由
プラザ合意の問題点
デフレスパイラル
・まとめと理想的な経済対策案

■消費税の導入と法人税の関係
1989年に消費税が導入された。一方で法人税を下げた。各国の法人税率を比較すると同水準に調整している傾向がみられることから、国際的な水準を意識していると考えられる。なお、この説を唱えている人は他にみられず、高橋洋一氏なども消費税との関係どまりのため、本ブログが新説となる。新説のため正しさが問われるが、「73.サラリーマンの納税制度の仕組みと消費税と法人税トレードオフ」でも紹介した下記サイトのデータを見れば一目瞭然である。

venture-finance.jp

■失敗している理由
おそらく、法人税を下げることでグローバル企業を呼び込んだり、租税回避を避ける対策の一環として日本の法人税を下げている。しかし企業がその分従業員に還元せず内部留保がたまっており、分配に失敗しているのだ。

■失敗した結果
以下の4つが考えられる
・消費税の名の通り、個人消費が抑制されている
財政赤字を強調したため、消費マインド、未来への不安が増長している
・企業は従業員に給料を分配せず、内部留保した
・グローバル企業の日本誘致は進まなかった

■そもそもあまり財政赤字は問題ない
消費税の導入の根拠を財政赤字とした。しかし実態は政府の「負債」の増大。負債の一方で資産も増える。また、政府単独ではわからないが、日銀と連結決算的にバランスシートを作成すると、その負債は特に特に問題にならないことが元財務官僚、高橋洋一氏らによって指摘されている。

国債の発行は民間にとって好ましい
ここから、国債発行が民間にとって良いことをみていく。公共事業を行う際に、4つの登場人物、政府、日銀、銀行、企業のお金の流れをみる。
ケース:公共事業のために国債を発行するとき
その1:公共事業へのお金の準備
・政府が国債100億を発行、銀行は国債を(日銀)当座預金100億を使って購入
すると
・政府の(日銀)当座預金:+100億
・銀行の(日銀)当座預金:-100億
となる
その2:企業への支払い
・政府は公共事業を請け負う企業に小切手100億を支払う
・企業は小切手を銀行に渡して代金をもらう手続きをする
・銀行は企業の口座に+100億と記帳する
・銀行は小切手を日銀に渡して代金をもらう手続きをする
すると、
・政府の(日銀)当座預金:+100億 -100億 =±0
・銀行の(日銀)当座預金:-100億 +100億 =±0
・企業の口座:+100億
となる

国債を多発しても民間への影響はない理由
一般的に国債を多発することで買い手がなくなった場合に金利が上昇するため不安を引き起こすと言われる。しかしその不安は無用である。その1、その2までが行われたときまでをみると、銀行は国債を買う際に民間のお金には手をつけていない。(日銀)の勘定に記録するのみにとどとまる。つまり、国債発行をすることで、国債の買い手が見つからず、そのため金利を上昇させて売らないといけないという局面にならない。それどころか、政府が国債を発行することで企業(民間)の貯蓄(預金)が増える。つまり、国債を発行するということは、民間にお金を回すための行為であるということ。

プラザ合意の問題点
国債の発行よりも問題なのは、企業(民間)から従業員にお金を回すほうが詰まっているからだ。これはプラザ合意が関係している。ドル高が進み、モノが売れないという悩みを抱えていた米国に協力するため、各国が協調してドル高を是正するという「プラザ合意(ニューヨークのプラザホテルで開催)」が行われた。この影響で円相場は1ドル235円から、翌日は20円下落、翌年には150円まで円高・ドル安となった。急激な変化は企業に混乱をもたらす。円高によって製造系企業などが国内工場を海外へと移転した。そのため産業の空洞化をまねいた。そのため日本での雇用が減少した。一方でグローバル企業は海外の安い労働力を使い、海外で雇用を調達した。グローバル企業は潤うが、国民は豊かにならないという産業構造となってしまった。

デフレスパイラル
グローバル企業だけの問題でもない。物価があがらないことも原因だ。物価があがれば給料もあがるからだ。国内では給料もあがらないため節約志向が進み、好んで安いものを買うようになった。それは100円ショップに代表される。企業側が積極的に安くすませる努力を行い、ますます安くすませる生活スタイルとなった。結果、物価があがらない、商品の値段をあげずらい状況となった。ちなみにニューヨークではラーメン1杯が2000円くらいする。日本では800円程度というような状況である。

■まとめと理想的な経済対策案
1.租税回避と国際的な法人税率の調整のため法人税率を下げたかった
2.その財源確保のため消費税を導入した
3.企業は利益を内部留保してしまった
ここまでは起きてしまったこと、仕方ない。これからは、
4.物価を徐々にあげることで結果企業の売上も増えるから、従業員に対する給料も同程度上昇するようにする
5.貯蓄を投資に回し給与所得以外の収入を得られるようにする
なお、ロシア・ウクライナ戦争で原油、小麦価格が高騰し、原材料高から意図せず物価があがっている。これで給料があがればよいのだが。影響を受けた企業では、給料を上げるのだろうか。見守っていく必要がある。

<参考>
・マンガでわかる日本経済入門