シン・ニホンシ

日本の歴史を新しい視点でとらえ、検証し、新しい未来を考える

50.ヘレン・ミアーズ「アメリカの鏡・日本」完全版を読んで

アメリカの鏡・日本」を読んだ。内容も濃くかったので読了後のやり遂げた感があった。アメリカ側視点での太平洋戦争の描写は、当然日本側視点の情報と異なるものでもある。また、著者はアメリカの体制側の人間であるため、当時の戦況やアメリカの心理描写を的確に理解していた。そして、日本から見たときのアメリカの不可解なふるまいがわかったという点で、妙な納得感を得た。次の流れで見ていく。
・ヘレン・ミアーズ
・日本での出版
アメリカの鏡とは
アメリカの他国に対する行動原理、考え方

■ヘレン・ミアーズ
 原著、「Mirror for Americans:JAPAN 」は アメリカで1948年に出版された。日本の敗戦後から3年目にあたる。ヘレン・ミアーズは1946年に来日。 連合国最高司令官総司令部・労働局の諮問委員のメンバーの一人として戦後日本の労働基準法の策定にも携わった。翻訳家の原氏は、著者からの寄贈を受け、翻訳出版の許可を得るまでこぎつけた。そして原氏はGHQに対し嘆願書を書き、出版の許可を得ようとした。しかし、GHQからは不許可の決定が下された。書簡の中で「本書はプロパガンダであり、公共の安全を脅かす(略)」という理由が添えられた。

■日本での出版
 占領が終了した翌年の1953年、「アメリカの反省」として原氏は翻訳版を出版する。 しかし、当時の時代背景もあってかさほど話題にのぼらなかった。「完全版」は、現代史を勉強している中で「伊藤延司」氏が訳し、1995年に出版したバージョンである。

アメリカの鏡とは
 タイトルの「アメリカの鏡」とはどういう意味であろうか。子は親の鏡という言葉がある。子は親を見て育つ。親の真似をして育つ。行動、言葉づかいなどだ。親から見れば、自らが与えた振る舞いの通りに現れるという「子ども」はまるで「写し鏡」であるということだ。日本は欧米をまねて育った。日本の何がいけなかったか、その罪とは「欧米と同じまね」をアジアで行ったことだ。ヘレン・ミアーズは親日ではないと考えられる。そして生粋のアメリカの愛国主義者だ。またアメリカを基準とし、アメリカの行動は正義とも考えていると思われる。

アメリカの他国に対する行動原理、考え方
 そんなアメリカの考え方を学ぶ一文があった。以下に本文より抜粋する。

 ーーー以下抜粋ーーー
 アメリカは、アメリカ圏において、
 いかなるときに権益の防衛を必要とするか、
 その場合いかなる防衛手段を発動させるか、
 を決定する権利を留保している。
 つまり、アメリカは国際的制約を受けない立場にいて、
 他国を国際的に制約したいと思っている。
 アメリカは判定するが、判定されたくないのだ。

 ーーー抜粋終わりーーー

 国際連盟における日本の人種差別撤廃提案の否決、TPP11の交渉などでアメリカの振る舞いをみると、もとは自らが提案したような高尚な思想や主張であっても、それによって自分たちが制約を受けたくない、という立場をとるのであろうか。だから、アメリカは、利権が確定することを明示することはあっても、行動が制限されるようなことを、明確にはしたくないのだ。