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113.シュメール人によるメソポタミア文明と神話の大洪水が象徴するもの

シュメール人がつくったとされる古代メソポタミア文明を紹介する。そしてシュメールにおける洪水の時期を推定する。また洪水伝説の教えとは何なのだろうか。
メソポタミアとは
現在のイラクにあたる地域で古代発達していた文明。メソポタミアとは「河の間の地」を示す。エリアは南部のバビロニア、北部のアッシリアにわかれる。メソポタミアは砂漠ではない。また北部と南部で異なる地理的環境にある。政治面や外来勢力への対処で南北がまとまることはあったものの原則バビロニアアッシリアは対立していたとされる。
■ユーフラテス河
古代メソポタミア文明はユーフラテス河のほとりで起こった。ユーフラテス河は大部分がイラクに属する。現在のトルコのアララト山付近の水源からシリア・アラブ共和国を通過して河口付近の都市バスラまで約2,800kmにおよぶ。陸上交通よりも船舶交通が発達した。船舶が行きかう。のちの時代に成立するハンムラビ法典第240条では「河を遡る船の責任」が明記されたほど。
■ティグリス河
ユーフラテス河の東方を流れる。水源から河口までは1,900km。たびたび大洪水を起こしたため「暴れ河」として有名であった。
■古代メソポタミア
メソポタミア文明の最盛期は新バビロニア王国滅亡まので約3,000年間。紀元前3,500年の都市文明の始まりから紀元前539年までをいう。メソポタミアにおける時代区分の中に「ウルク文化期」がある。古代メソポタミアはこの「ウルク文化期」以降を指し、それ以前を含めない。紀元前3,500年頃から紀元前3,100年頃よりシュメール人アッカド人が活躍する。主にシュメール人が発達させた古代メソポタミアをもって「メソポタミア文明」と言っている。
ウルク文化期以前とは
古代メソポタミアより前の時代をみていく。
・紀元前8000年頃:新石器時代で農耕が開始
・紀元前7000年期後半:最古のスタンプ印章が発見される
・紀元前6000年頃:ハッスーナ文化期が始まる
・紀元前5000年頃~3500年頃:ウバイド文化期にあたる
シュメール人(シュメル人)
シュメール人メソポタミアにいつ頃、どこからやってきたかは現在も謎とされる。シュメール語は日本語と同様の膠着語(こうちゃくご)とされる。膠着語は日本語の「てにをは」のような単独で用いられることのない「接辞」を持つ言語に属する。この膠着語はシュメール語に近い古代オリエント世界の言語では確認されていない。このためシュメール人の発祥が謎とされている。また、シュメール人メソポタミア文明で紀元前3,500年頃~紀元前3,000年頃まで活躍したのち紀元前2,000年頃には異民族の侵入によって歴史の表舞台からいなくなったとされる。
■シュメル王朝表
シュメル王朝表には都市の名前、各都市の王名、治世年数、合計の王の数などが記されている。初期王朝時代の都市国家の興亡をたどる際の参考となるとされる。ウル第三王朝時代に編纂され、その後も追加があったとされる。治世年数はありえない数値もある。信ぴょう性がでてくるのは紀元前2334年のアッカド王朝あたりからとされる。
■シュメル王朝表にもとづく大洪水の時期
シュメル王朝表に大洪水以前と以後をわける記述がある。初期王朝時代第Ⅰ期が大洪水以前とされるため、第Ⅱ期が大洪水以後である。この初期王朝第Ⅱ期は紀元前2,750~紀元前2,600年である。つまりシュメール人が記録したメソポタミア地域における大洪水は紀元前2,750年より前の頃である。ウルク文化期以前の文明が大洪水によって流されたと考えられる。
■大洪水伝説とは
メソポタミアでの災害といえば洪水であった。古代では洪水の理由はわからなかった。神々が人間を滅ぼすためと考えられていた。前2,000年期前半の作成と思われる粘土板にて、ギルガメシュ叙事詩の中に大洪水伝説がみられる。小林登志子氏の著書ではこの大洪水は「河の大氾濫ではないか」とされている。
■大洪水が象徴するもの
「事実」としての河の大氾濫と「神話化」された洪水は異なると思われる。このシュメールの洪水伝説のほか、旧約聖書ノアの箱舟伝説、バベルの塔、ソドム、ゴモラの伝説は過去の人類から現代に生きるわれわれへの教訓。インドネシアスマトラ島沖地震、日本で起きた東日本大震災津波、トンガの火山による津波はこれから世界で起きる未来を暗示しているかもしれない。つまり大洪水とは、過去蓄積され伝承されてきた自然災害、天変地異を人類への戒めとして、物語に凝縮している意味合いがある。神話としてその魅力、インパクト、シンプルさをパッケージ化し、ポータビリティ性を備えて各地域に神話は伝播した。神々や自然への恐れを忘れたとき、古代エジプトの文明古代のギリシャ文明、シュメールのメソポタミア文明も都市と共に消えさった。
■まとめ
メソポタミア地域における大洪水は紀元前2,750年より前の頃
・大洪水伝説は人類への戒め
■感想
・好むか好まざるか、結果さまざまな事情で「導かれて移動する使命の民族」がいる
<参考>
・古代メソポタミア全史 小林登志子
・シュメル 人類最古の文明 小林登志子
新着情報|東北学院大学
ウバイド文化 - Wikipedia
シュメール - Wikipedia