シン・ニホンシ

日本の歴史を新しい視点でとらえ、検証し、新しい未来を考える

129.聖徳太子による国造りと和を以て貴しとなすの真の意味

儒教や仏教はどのような経緯で日本に導入されたのでしょうか。実は儒教も仏教も国造りの計画の中で、意図をもって日本に取り入れられた教えでした。本記事では儒教や仏教の導入の歴史、聖徳太子による国造りまでを紹介します。
儒教の導入
500年代頃において、日本からの任那4県の割譲のお礼として、百済は五行博士を派遣しました。513年には段楊爾(だんように)が来日し、儒教が導入されました。この段楊爾は3年ほどしたのちに帰国します。その後は漢高安茂、馬丁安、王道良、王柳貴、王保孫、王有㥄陀、潘量豊、丁有陀らが続きます。
■仏教の導入
民間における伝来としては一般的に知られているよりも前にもたらされ、既に信仰が始まっておりました。538年というのは公式的に日本にもたらされた年です。百済の第26代王、聖明王より教典や仏像が日本に伝えられました。
聖徳太子
聖徳太子は574年-622年の人物です。用明天皇の第二皇子として生まれました。厩戸豊聰耳(うまやどのとよとみみ)皇子とも呼ばれています。イエス・キリストは家畜小屋で生まれたとされています。この「うまやど」という名前もキリスト教や当時の時代の影響を受け聖人としての神格化がなされたものでしょうか。聖徳太子は叔母にあたる推古天皇の摂政となります。冠位十二階、憲法十七条を通じて中央集権国家の体制の基礎をつくりました。聖徳太子は当時、日本の政治や国家体制を整えましたが神道に加え、儒教、仏教、キリスト教を受け入れていく下地をつくる使命であったようです。世界的に思想や宗教を統合していくための計画として1400年前に生まれたのです。
■冠位十二階
603年に冠位十二階を制定しました。それまでは氏姓制度を通じて国や地方を動かしていました。特に中央の豪族には臣(おみ)、連(むらじ)を、地方の豪族には君(きみ)、直(あたい)、首(おびと)を与えていました。弊害とし一部の貴族や豪族に権力が集中していました。このような問題を解決するため、冠位十二階をつくり、能力のあるものを採用する人材登用制度をつくりました。この冠位十二階制度では儒教の影響を受けています。儒教の仁、礼、信、義、智の上に「徳」がもっとも高い位となっています。また色は青、赤、黄、白、黒の上に紫を最も高い位と位置付けました。他国の冠位制度も参考としながら取り入れたようです。能力別が基礎になっているようにみえます。しかしその実態はその人材を「徳」という人格を高低で表したものになっています。
憲法十七条
604年には憲法十七条を制定しました。この憲法には儒学、仏教のほかに法家の影響ががみられるようです。国や時代も異なるため比較が適切かはわかりませんが、モーセ十戒が当時の古代イスラエル人との神との契約、禁止事項や遵守事項であったとすると、憲法十七条では同じく禁止、遵守事項の中にも人としての理想像が示されています。この憲法では儒教による秩序形成、仏教の教えである三宝帰依という仏・法・僧の3点セットの大切さ、政治の基本原理を示しています。
■第一条の和を以て貴しとなすの真の意味
皆様はこの「和を以て貴しとなす」という言葉を聞くとどういう解釈をされますでしょうか。例えば、あまり目上の人には逆らわない方が得だとか、あるいは聞き流してしまって我慢するほうが対立を避けているからこっちのほうが精神面では上だという考えもありますでしょうか。本来はそのような意味は間違いのようです。自分の心に正直になった上で、不平不満があればしっかり出してぶつけ合う。そしてその中で互いが歩み寄って理解しあう。つまり、安易な妥協に「和」は生まれない。ぶつけあい、互いを尊重したうえで、最後でてくるのが「和」という状態である。異なる視点を持つ者同士、尊い存在であるとみなせるようになるまでトコトン議論しようというのが本来の意味のようです。
■意見交換のためのコツ
日本人は議論することそのものや、目上の人に対して意見を言うのは苦手だと思います。ではどうすればよいのでしょうか。あらかじめ話し合う方法を決めておくことが良いかもしれません。ギリシャ哲学の議論のように、相手と自分の双方の意見を交わしあうスタイルで意見交換する。また議論は優劣をつけるためのものではなく、意見を交わすための仕組みであると位置づけておくのもよいかもしれません。
■豆知識
冠位十二階制度で誰が「徳」に指定されたかについて。603年に制定、605年~648年まで施行されましたが、「秦河勝」が「小徳」に指定された記録があるようです。
■謝意
とある2冊の書籍の見解を骨格としつつ、日本史研究を経てエッセンス化、インターネット調査などをふまえて肉付けさせて頂きました。内容でご判断ください。
<参考>
聖王 (百済) - Wikipedia
仏教公伝 - Wikipedia
五経博士 - Wikipedia
任那 - Wikipedia
氏姓制度 - Wikipedia
冠位十二階 - Wikipedia
十七条憲法 - Wikipedia
モーセの十戒 - Wikipedia