旧約聖書の預言書を紹介する。そしてイザヤ書にて「東の国」の存在がイスラエルの民に暗示される。そしてユダヤ人が国を失い離散していくまでの歴史的な出来事を時系列でまとめた。
■預言と予言の違い
神から預かったメッセージを伝えるのが預言。一方、予言とは単に未来をあらかじめ言うという「予言」という意味で用いられ、両者は区別される。
■旧約聖書における預言書
イザヤ書以降マラキ書までを「預言書」という。以下の通りで大預言書、小預言書に区別される。大小は分量で区別される。
<大預言書>
・イザヤ書、エレミヤ書、哀歌、エゼキエル書、ダニエル書
<小預言書>
・ホセア書、ヨエル書、アモス書、オバデヤ書、ヨナ書、ミカ書、ナホム書、ハバクク書、ゼファニア書、ハガイ書、ゼカリヤ書、マラキ書
■3大預言書
イザヤ書、エレミヤ書、エゼキル書が三大預言書と言われている。イザヤは「救世主の到来」を預言。エレミヤの時代は既に北イスラエルは滅びていた。エレミヤは「災いが南ユダ王国にも襲いかかること」を預言。エゼキルはバビロン捕囚を経験。そしてエルサレムと神殿の崩壊を預言。また「4頭の動物と光り輝く神」という幻視を見た。神が幻視にてイスラエルの復活を教えたという。続いて3大預言書のうち、最も有名なイザヤを紹介する。
↓以下のwikiの画像はラファエロ・サンツィオの「エゼキルの幻視」の絵画
ja.wikipedia.org■イザヤ
ウジヤ王が死亡した前742年、神の啓示を受け預言活動を始めた。40年間にわたって活躍。イザヤ書は66章から成る。イザヤが活躍した時代は1章から39章までのユダ王国のウジヤ王からヒゼキヤ王までの時代。40章以降のイスラエルとユダが滅亡した後にバビロン捕囚となってそして解放される時代の章は、無名の預言者たちによって記されたものと考えられている。40章~54章を第二イザヤ、55章~66章を第三イザヤと区分している。ただし近年、死海文書が発見され一巻の巻物で統一されていたことから、同じイザヤのものではないかとする説もみられる。
■イザヤ書で東の国の存在を暗示したヤハウェ
イザヤ書:24:14-24:15
引用:「彼の者たちはしかしながら、声を上げて喜び、ヤハウェの威光のゆえに、人々は海の向こうから歓呼の声を上げる。それゆえ彼らは、火の国々(※)ではヤハウェを、海の島々でもイスラエルの神、ヤハウェの名を讃える。」
※脚注に「光り出る東の国々と解される」とある
※その他の箇所にもみられる。訳次第のところもある。確定的な個所を1つ取り上げた。
■ディアスポラに至った出来事
以下にユダヤ人が各地、各国に離散するまでの主な出来事8つを記す。なお離散は段階的に行われたとみられる。
■1.北イスラエル王国(前922年-前722):
前722年にアッシリア帝国に滅ぼされた
■2.南ユダ王国(前922-前586年)
紀元前586年に新バビロニアによって滅ぼされた
■3.バビロン捕囚:
紀元前597年~紀元前538年、新バビロニアの王ネブカドネザル2世によって、ユダ王国のユダヤ人たちがバビロンを始めとするバビロニア地方へ捕虜として連行、移住させられた事件をさす
■4.イザヤが活躍した時代:
ウジヤ王~ヒゼキヤ王までとされ、ウジヤ王の死んだ前742年に神の啓示を受け預言活動を始め、40年間にわたって活躍したとされる
■5.アレクサンドロス大王の東方遠征:
在位は紀元前336年〜紀元前323年。20歳でマケドニア王となったアレクサンドロス3世が東方遠征を行う。前323年、バビロンで熱病にかかり32歳で死去。ギリシア文明とオリエント文明を融合させヘレニズム文化を築いた。その東方遠征のルートにはイラン(かつてのメソポタミア)やエルサレムも含む。アレクサンドロス大王が辿ったルートは以下で確認可↓
sekainorekisi.com
■6.イエスキリスト:紀元後1年 - 紀元後33年
ヨセフとマリアの子イエスキリストはパレスチナのベツヘレムで生まれた。ヨセフもマリアもダビデ家の末裔である。3年半活動した。有名な山上の垂訓の舞台は、ガリラヤ湖西岸といわれているが、位置の特定ははっきりしないとされる。ガリラヤ湖はイスラエル北東部、ヨルダン地溝帯、海抜マイナス213mで別名ティベリアス湖とも呼ばれる。聖書には若い時代の記述がないが、インドなどで修業を行っていたとされる。
■7.第1次ユダヤ戦争:66~74年
ローマ帝国とローマのユダヤ属州に住むユダヤ人との間で行われた戦争。紀元後70年にエルサレム神殿が炎上、エルサレムが陥落する。73年にはマサダの戦いでユダヤ人集団が敗れ、ユダヤ戦争は終結した。
■8.第2次ユダヤ戦争:131-135年
ローマ皇帝ハドリアヌスがエルサレム神殿跡地にユピテル神殿を建設しようとしたときに起きた戦争。ユダヤ人はバル・コクバを指導者としてローマに反乱を起こした。135年にバル・コクバは捕らえられ、処刑されて反乱も終結。再びエルサレムが破壊され新しい市街地ではユダヤ人のいっさいの立ち入りが禁止された。これよりユダヤ人の多くが地中海各地へと離散していった。
<参考>
・イザヤ書 岩波書店
・旧約聖書Ⅲ預言者~希望を告げし者たち~ 財団法人日本聖書協会
・聖書の預言者イザヤと、イザヤ書の内容を分かりやすく解説!(前編)
・イザヤ書 - Wikipedia
・ユダヤ戦争 - Wikipedia