シン・ニホンシ

日本の歴史を新しい視点でとらえ、検証し、新しい未来を考える

148.インドのブラフマンの卵、韓国の卵生神話、日本神話の天地開闢

ここでは日本、インド、韓国における神話や始祖との関係を「卵」をテーマに調べ、古代の各国での思想的なつながりに対する理解をより深める。韓国は卵生神話を持つのだが、その理由はインドの「ブラフマンの卵」にあるかもしれない。

日本書紀における天地開闢(てんちかいびゃく)
日本書紀は720年に成立。宇宙の始まりを当時の人びとの科学的知識に即し「卵」に例えて説明がなされた。宇宙の初期状態においては天と地、つまり惑星という生命を育む場もない。そして陰陽の作用、陽という創造する働きと、陰という支える力もない。そういう混沌とした状態を「卵」で示した。しかしその状態とは「何もない」のではなく、生命というあらゆる可能性が無限につまっている。やがて生命が誕生し、活動し、学んでいくという、無限の未来への可能性に対する比喩表現である。

■インドのブラフマンアートマン、梵我一如の思想
まず仏教はインドで生まれた。インドの思想にはヒンドゥー教インド哲学がある。聖なる知識を意味するヴェーダがある。その中で「梵我一如(ぼんがいちにょ)」が究極の悟りとされる。梵とはブラフマン、宇宙そのもの、それを支配する原理法則。一方の我とはアートマン、個人を支配する原理のこと。このが梵と我が同一であり、それを同一であることを「知る」ことが悟りとされる。つまり、宇宙を海水という大量の水に例えるとするならば、そこから手のひらにすくったわずかな水であっても、その水そのものは海水と同じ性質を持つ。宇宙という全体と個という構成要素は同じであり、同じであるがゆえに、個においても宇宙と同じ性質や力を兼ね備えているとするもの。

ウパニシャッド
ウパニシャッド」はサンスクリット語で書かれたヴェーダの関連書物。ウパニシャッドの哲学者はブラフマー(創造主)、ヴィシュヌ(保持者)、シヴァ(破壊者)は本来同じであり、三神一体であるとする。

■インドのブラフマンの卵(梵卵)
そのブラフマー(創造主)は宇宙という卵を2つに割り、天と地をつくったとされる。

■インドの聖人史
紀元前6500年頃に愛と知恵の神としてヴィシュヌが生まれた。次に紀元前4700年頃、西インドにおいてのちのシヴァ神、破壊の神と呼ばれるようになった方が生まれる。同じ紀元前4700年頃、クリシュナが生まれた。親愛や慈しみを説いた。古代インドの聖人たちの教えが紀元前8世紀には「リグ・ヴェーダ」、紀元前7世紀には「ウパニシャッド」として記録に残った。のち紀元前645年には釈迦が生まれた。紀元前521年頃、ヴァルダマーナが生まれジャイナ教が起こった。紀元前577年頃にはアジタ・ケーサカンバリンが生まれた。世界を地、水、火、風の4要素の離合集散によって説明し哲学的、科学的な思想が芽生えた。なお、ギリシャのエンペドクレス(紀元前490年頃 – 紀元前430年頃)にも類似する火、水、空気、地の四元素説がみられる。続いて紀元前515年、パグダ・カッチャーヤナが生まれた。アジタの4要素は唯物論であった。これに苦・楽・命を加えた七要素説を唱えた。地、水、火、風を「ルール、合理論」に例えるとすれば、苦・楽・命は体験して学習し成長していくという「経験論」に似ている。
■仏教の伝来
インドで生まれた仏教は、上座部仏教南伝仏教)、大乗仏教(北伝仏教)とにわかれた。日本には538年に百済聖明王を通じて伝わり、大乗仏教が伝わった。
■韓国の神話
韓国における神話としては次のような神話が存在する
檀君神話
高句麗:高朱蒙(コチュモン)神話
新羅:朴赫居世(ヒョッコセ)、昔脱解(ソク・タレ)
・駕洛(カラク):金首露(キムスロー)神話
耽羅国(タムラ、済州島):三姓始祖神話
■韓国の卵生神話
王朝の始まりや民族の始祖の伝承に卵生神話がみられる。高句麗の高朱蒙神話、新羅の朴赫居世神話、昔脱解の神話、駕洛の金首露神話にみられる。
参考:NPO東京自由大学 檀君神話(文献神話) http://jiyudaigaku.la.coocan.jp/kannkoku/sinnwa.htm

■感想
韓国が卵生神話を持つのはなぜか。宇宙の始まりが梵卵であるという考えが根本にあるのではないか。それを前提とし、宇宙の創造神としての子孫として、卵を象徴して生まれるというのが王朝の正当性を示すのだろう。

<参考>
・現代語訳 日本書紀 福永武彦
アジタ・ケーサカンバリン - Wikipedia
エンペドクレス - Wikipedia
パクダ・カッチャーヤナ - Wikipedia
仏教公伝 - Wikipedia
卵生神話(らんせいしんわ)とは? 意味や使い方 - コトバンク