シン・ニホンシ

日本の歴史を新しい視点でとらえ、検証し、新しい未来を考える

190.キャノンの観音とMAZDAのアフラ・マズダ―~企業名の中の神~

本記事では「企業名」をテーマにそのネームの中の神さまを取り上げ、日本の古代を紹介する。前記事の「火祭り」にも関連する火をあがめるゾロアスター教拝火教)、そしてその影響を受けた日本のお寺、宮などを次の流れで紹介する。
・キャノン
観音菩薩(かんのん ぼさつ)
MAZDA
ゾロアスター教
マニ教
・古代日本のゾロアスター教の影響
・まとめ
■キャノン
キャノンの社名は観音様の「かんのん」が由来になっている。時代は1933年~1934年ころ。前身となる「精機光学工業研究所」においてカメラの試作を行っていた。その時の最初の試作機の名前が「KWANON(カンノン)」であった。「観音様の御慈悲にあやかり世界で最高のカメラを創る夢を実現したい」との願いが込められている。
詳細は↓
global.canon

観音菩薩(かんのん ぼさつ)
仏教の菩薩の一尊。別名に観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)、観自在菩薩(かんじざいぼさつ)、救世菩薩(くせぼさつ・ぐせぼさつ)など多数の別称がある。なお、ボーディ・サットヴァの音写の菩提薩埵(ぼだいさった)の略が「菩薩(ぼさつ)」にあたる。

MAZDA
自動車メーカーでもあるマツダ。最近は街中で赤色のCX-5を見る機会が増えただろうか。社名の「マツダ」は、アフラ・マズダー(Ahura Mazda)に由来している。この名前はゾロアスター教最高神。叡智、理性、調和の神とされる。創業者の松田重次郎氏の姓にもちなんでいる。マツダの歴史は1920年(大正9)、広島の「東洋コルク工業」から始まる。1931に第1号の自動車製品となる3輪トラックを発売。その3輪トラックの名称が「マツダ号」であった。松田氏はアフラ・マズダーを「東西文明と自動車文明の始原的シンボル」としたとされる。

ゾロアスター教
拝火教とも呼ばれる。イラン高原に住んでいた古代アーリア人多神教であった。その多神教をもとにゾロアスター(またはザラシュトラ、ツァラトゥスラ)がアフラ・マズダ―を信仰の対象として創設。紀元前6世紀にアケメネス朝ペルシアが成立したときには王家や王国を支えるペルシア人はほぼ信奉していたとされる。紀元前2世紀にはパルティア王国の人々により聖典「アヴェスター」が編纂された。ゾロアスター教の葬送形式は、鳥葬、風葬とされ、遺体を野原などに放置、風化ないし、鳥がついばむなど自然に任せていたとされる。そのための施設を設けることもあったようだ。善神群と悪神群の戦う「善悪二元論」の思想がある。善悪の「善」とは神の側の視点にたったときに正しいかどうか、とされる。悪はその反対で、神の意思にそわない、自分勝手な思いとされる。礼拝中に火鉢に火を満たし、部屋に煙を充満させ、祈りの言葉を唱えるとされる。このため別名「拝火教」とも呼ばれる。一説によれば奈良・東大寺二月堂「お水」取りのルーツは古代インド・サンスクリットからゾロアスター教の影響を受けているという。(120.の記事でも紹介)。

マニ教
マニ教ペルシア人のマニがゾロアスター教に、キリスト教ユダヤ教、仏教などの要素を加えたもの。3世紀頃、ササン朝ペルシアでマニ教が始まる。7世紀末にソグド人などを通じて唐に伝わり摩尼教(または明教)と呼ばれた。中国のおける摩尼教の信者の多くはモンゴル人であった。

■古代日本のゾロアスター教の影響
小説家の松本清張が「火の路」の中で斉明天皇の「両槻宮(ふたつきの宮)」をゾロアスター教の神殿と結びつける説を主張した。ただし、両槻宮は荒廃し現在は場所は特定できない。また一説によれば飛鳥の酒船石遺跡も石に奇妙な溝が彫られているなどし、ゾロアスター教の影響ではないかとの説がみられれる。↓酒船石のイメージ

yamatoji.nara-kankou.or.jp

■まとめ
・キャノンは観音、マツダアフラ・マズダ―の名前を採用している
ゾロアスター教ペルシア人が信仰、善悪二元論拝火教をキーワードとする
マニ教は東西の思想が融合、ゾロアスター教キリスト教ユダヤ教、仏教など
・日本においては奈良時代ゾロアスター教の影響を受けている可能性あり

<参考>
120.文明の出発地から終着地へ~中東の地より太陽が昇る東の国へと至る3つのルート~ - シン・ニホンシ
マツダ会社概要 | 【MAZDA】よくあるお問合せFAQ
マニ教 - Wikipedia
酒船石遺跡 - Wikipedia
・奈良・飛鳥と「汎ユーラシアのイラン文化」:https://www.narapu.ac.jp/media/vol18-06.pdf