今回は「鉄剣、鉄刀、鏡に記された文字」をテーマに日本の古代を探る。
②では下記を取り上げる。
中国製造
１．東大寺山古墳 / 漢中平紀年大刀（かんちゅうへいきねんたち）
韓国製造
２．七支刀／石上神宮
３．有銘環頭大刀／朝鮮三国時代
４．有銘円頭大刀／朝鮮三国時代
■１．東大寺山古墳 / 漢中平紀年大刀（かんちゅうへいきねんたち）
東大寺山古墳（とうだいじやまこふん）の所在は奈良県天理市櫟本町。形状は前方後円墳。築造は4世紀後半頃。出土品の中に鉄刀があり、漢中平紀年大刀とも呼ばれ、国宝に指定。その文字の中には「中平」年間の紀年銘がある。これは中国の西暦184年-188年、後漢の霊帝の年号にあたる。卑弥呼期以前の倭国大乱の可能性のある時期と重なる。大刀に24文字が金象嵌として次の彫られている。
中平□□（年）五月丙午造作文（支）刀百練清剛上応星宿□□□□（下避不祥）
※□は欠損で不明、（）は推測されている文字
意味は次のように解釈されている。
中平□年五月丙午の日、銘文を入れた刀を造った。
よく鍛えられた刀である。
天上では神の御意に叶い、
下界では禍を避けることができる
和邇（わに）氏族の拠点が天理市和邇から櫟本（いちのもと）にかけてとされる。その一族の古墳のひとつが東大寺山古墳。
参考①：東大寺山古墳 - Wikipedia
参考②：天理大学 東大寺山古墳 謎の刀
https://www.tenri-u.ac.jp/topics/q3tncs00001f6qx4-att/todaijiyama.pdf
■２．七支刀
七支刀は石上神宮（いそのかみじんぐう）に納められている国宝。石上神宮は奈良県天理市にあり、大和朝廷の武器庫とされる。全長74.8cm。金象嵌の銘文が記されている。
表と裏のそれぞれに文字があり、あわせて61字、表34字、裏27字とされる。表と裏、判別のしかたにより各2パターン、合計4つの読み取り結果がある。
＜表＞
その１
泰□四年□月十六日丙午正陽造百錬□七支刀□辟百兵宜供供（異体字、尸二大）王□□□□作
その２
泰□四年十一月十六日丙午正陽造百錬□七支刀□辟百兵宜供供侯王□□□□作
＜裏＞
その１
先世（異体字、ﾛ人）来未有此刀百済□世□奇生聖（異体字、音又は晋の上に点）故為（異体字、尸二大）王旨造□□□世
その２
先世以来未有此刀百濟□世□奇生聖音故為倭王旨造□□□世
268年、369年、468年説がみられる。通説としては欠損部を秦和4年とみなした369年が有力説。
過去記事でも七枝刀を紹介した。これは表側の「その２」を支持、「11月16日丙午」とした369年説を支持したもの。腆支王は日本で過ごした経験を持ち405年には第18代王として即位。この腆支王と八須夫人の子「久尓辛王」の誕生を祝して七枝刀が倭国に献上されたのではとする説を支持した。
参考①：過去記事、七枝刀に象徴される古代日本と百済の関係
■３．有銘環頭大刀／朝鮮三国時代
朝鮮の三国時代、5世紀の金銀鉄製。発見は朝鮮半島、韓国南部の昌寧付近の出土と伝わる。「単龍文環頭大刀（たんりゅうもんかんとうたち）」とも。柄頭(つかがしら)の環の中に龍の装飾が入っている。
次の文字が入っているとされる。
不畏也□令此刀主富貴高遷財物多也
意味は
この大刀を所持する者に何も畏れることはなく，高い地位と富が保証される
という吉祥句とされる。
↓は金龍の柄、記事中の最後の方に紹介あり
■４．有銘円頭大刀／朝鮮三国時代
朝鮮の三国時代、5世紀とされる大刀。銀線が埋め込まれた銘文が刻まれている。韓国慶尚南道・昌寧校洞11号墳より発掘された。大刀は74cm。9文字がみられる。
その文字は
□咅先人□□尊□刀
とされる
参考：刀剣ワールド、ページ中ごろで有銘円頭大刀の紹介あり↓
https://www.touken-world.jp/museum/4511/special-contents/
■まとめ
・東大寺山古墳 より、和邇氏が漢中平紀年大刀を保持していた。年代は倭国大乱の時期を示し、ひじょうに高尚、高潔な内容。
・鉄剣に文字を刻んでいた時代は製造国などが特定できる。後漢（200年前後）の中国、朝鮮からの３～５、６世紀、日本製としては5～8世紀頃。
・過去記事なども通して、威信財が銅鐸、中国からの鏡、鉄剣、そして金のアクセサリーなどへと変遷していることがかわる
■感想
・なぜ鉄剣は発見されるが肝心な名前部分が欠損することが多いのか
＜参考＞
・七支刀 - Wikipedia
・有銘環頭大刀
東京国立博物館 - コレクション コレクション一覧 名品ギャラリー 館蔵品一覧 有銘単龍紋環頭大刀（ゆうめいたんりゅうもんかんとうたち）
・日本文化財学会 文字の書かれた大刀 http://www.jssscp.org/files/backnumbers/3132_7s.pdf
