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278.兵庫県南あわじの入田稲荷前遺跡から出土した「貨泉」と大和大国魂神

兵庫県南あわじ市の入田稲荷前遺跡から中国の古い貨幣「貨泉」が出土している。この「入田稲荷前遺跡」や「貨泉」、そして周辺地域にちなんだ「大和大国魂神」を取り上げる。次の流れで紹介していく。

・入田稲荷前遺跡
兵庫県内での貨泉の出土
・貨泉
・貨泉の全国的な分布状況
・新(しん)
・王莽(おうもう)
・大和大国魂神社(やまとおおくにたまじんじゃ)
・大和大国魂神(やまとのおおくにたまのかみ)

■入田稲荷前遺跡
所在は南あわじ市八木入田にあるとされる。
「貨泉」が3枚出土している。
「貨泉」は中国で紀元14~40年に鋳造、弥生時代にもたらされた青銅製の貨幣。
出土の状況として包含層という弥生~中世にかけての層から2枚が重なって出土している。
日経新聞で紹介されている記事

www.nikkei.com

兵庫県内での貨泉の出土
南あわじ市によれば
兵庫県内での貨泉の出土は7遺跡、10点
・うち弥生時代からとされる出土は入田稲荷前遺跡、姫路市鍛冶屋遺跡の2遺跡のみ
とされる。

なお、兵庫において弥生より後の年代からの出土としては以下の遺跡がある。

・北田遺跡(南あわじ市阿万東町)、1枚
・大崩遺跡(洲本市五色町下境)、1枚
・塩野遺跡(姫路市安富町)、2枚
・兵庫津遺跡(53次)(神戸市兵庫区)、1枚
・東山12号墳(多可町中区東山)、1枚
・芝原遺跡(姫路市豊沢町)、1枚

なお貨幣自体は古くても他の時代にまぎれこむことがある。
中世に大量に搬入された中国銭の中に混じることがある。

↓は南あわじ市のホームページ、弥生時代のお金を発見!の記事

www.city.minamiawaji.hyogo.jp

■貨泉
貨泉とは何か。中国の前漢後漢の間の王朝、「新:紀元8年~23年」の時代、王莽が西暦14年頃に初めて鋳造した銅銭。40年ごろまで鋳造されたとされる。
新の王朝は15年と短かかった。このため一緒に出土した土器などの年代を測る上で重要な資料となるとされる。

■貨泉の全国的な分布状況
全国的には
・全国で約180点が出土
・分布は北海道から南は沖縄県まで

うち弥生時代古墳時代前期に属するものは
・35遺跡91点(2017年現在)
・分布は東は山梨県、南は鹿児島県まで
とされる

兵庫県以外の弥生時代の出土としては

長崎県壱岐島原の辻遺跡では上層(九州の弥生後期前半)から1枚
広島県福知山市の本谷弥生遺跡
大阪府亀井(かめい)遺跡
大阪市の瓜破(うりわり)遺跡
などから発見されている。

■新(しん)
貨幣がつくられた新の時代とは。
中国にて紀元8年~23年まで続いた王朝。前漢外戚であった王莽(おうもう)前漢最後の皇太子、孺子嬰(じゅしえい)より禅譲を受けて成立させた王朝である。
↓はwikipedia、新

ja.wikipedia.org

■王莽(おうもう)

貨幣をつくったとされる王莽とは。
生没年は前45年~23年、在位は8年~23年。
前漢の第11代・元帝(げんてい)の皇后の王政君(おうせいくん、別称は孝元皇后)の甥、第12代・成帝の母方の従弟。
王莽は「錯刀」、「契刀」、「大銭」の3種類の貨幣を鋳造した。
↓はwikipedia、王莽

ja.wikipedia.org

■大和大国魂神社(やまとおおくにたまじんじゃ)

どのような土地であったか。
弥生期の貨泉がみつかった入田稲荷前遺跡の近く、南あわじ市榎列上幡多(えなみかみはだ)には「大和大国魂神社」がある。
主祭神は大和大国魂神である。

↓はwikipedia、大和大国魂神社

ja.wikipedia.org

■大和大国魂神(やまとのおおくにたまのかみ)
大和大国魂神は日本書紀崇神天皇6年、7年8月の条に登場。
古事記には登場しない。

崇神天皇6年。
天照大神、倭大国魂の二神を天皇の大殿に祭った。
しかしその二神の勢いを畏れてともに祭ることが難しくなる。

そこで天照大神を豊鍬入姫命(とよすきいりひめのみこと)に託し、大和の笠縫邑(かさぬいむら)に祀った。

一方の倭大国魂は渟名城入姫命(ぬなきいりびめのみこと)に託し祀らせた。
しかし、渟名城入の髪が落ち、体が痩せ、祀ることができなかった。
その後、倭迹迹日百襲姫命(やまとととひももそひめのみこと)大物主神(おおものぬしのかみ)が神懸り、この大物主神を祀る。

崇神天皇7年8月7日。
倭迹速神浅茅原目妙姫(やまととはやかむあさぢはらまくはしひめ、倭迹迹日百襲姫命のことと解釈されている)大水口宿禰(おおみくちのすくね、穂積臣の遠祖)、伊勢麻績君(いせのおみのきみ)の3人が夢の中に大物主神が現れて言った。

大田田根子命(おおたたねこのみこと)を大物主神を祀る祭主とし、市磯長尾市(いちしのながおち、倭直の祖とされる)倭大国魂神を祀る祭主とすれば、天下太平となるだろう。

ここから、次のことがわかる。
・豊鍬入姫命は祖神の天照大御神を祀った
・意富多々根古が祖神の大物主神を祀った 古事記では大・おおは意富
・市磯長尾市が倭大国魂神を祀った
倭大国魂神倭国造の祖である

あわじが古い時代を持つ地域であることがわかる。
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<参考>
日本書紀(一)岩波文庫
兵庫県立考古博物館の「貨泉」のページ 考古資料集成13.貨泉 | 兵庫県立 考古博物館
・貨泉:第1章 弥生時代の年代 2.弥生時代の年代 | 弥生ミュージアム (yoshinogari.jp)

貨泉(かせん) - 福山市ホームページ
兵庫県教育委員会
https://www.hyogo-c.ed.jp/~board-bo/kisya29/2905/290518bunkazai.pdf
孺子嬰 - Wikipedia
王政君 - Wikipedia
渟名城入姫命 - Wikipedia

倭迹迹日百襲姫命 - Wikipedia
市磯長尾市 - Wikipedia