シン・ニホンシ

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297.須玖岡本遺跡と多鈕細文鏡の鋳型が見つかった須玖ウタカタ遺跡~紀元前150年頃の奴国の技術~

今回は須玖岡本遺跡、須玖ウタカタ遺跡を取り上げる。次の流れで紹介していく。

・須玖遺跡群(すぐいせきぐん)
・須玖岡本遺跡(すぐおかもといせき)
・須玖岡本遺跡・岡本地区の2016年の調査
・須玖タカウタ遺跡

■須玖遺跡群(すぐいせきぐん)
所在は福岡県春日市岡本。須玖岡本遺跡を中核とする60以上の複数遺跡の総称。
かつての魏志倭人伝時代の奴国(なのくに)のあった場所と考えられている。
現在、奴国の丘歴史公園内に須玖遺跡群や奴国の丘歴史資料館が存在する。
なお、那珂八幡古墳と須玖遺跡群はおよそ5.7kmほどの距離。

↓はgooglemap、須玖遺跡群

maps.app.goo.gl
↓はgooglemap、奴国の丘歴史資料館

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■須玖岡本遺跡(すぐおかもといせき)
弥生時代を中心とする遺跡。

・遺跡の最高所の地点
 標高36.3mの地点を中心とし約300基の墓壙が確認されている。
 弥生時代中期~後期初頭の116基以上の甕棺墓群、木棺墓
  弥生時代中期後半の祭祀遺構
 などが見つかっている

・西側の平坦地
 竪穴建物跡:9軒
 片磨岩製小銅鐸の鋳型
 が出土している

・巨石下甕棺墓の副葬品
 明治時代に発見された。しかしその後遺物が散逸した。
 判明しているのは次の通り。
 ・銅剣: 2
 ・銅矛: 4
 ・銅戈: 1
 ・銅鏡(前漢鏡):32面以上
  ・方格四星草葉文鏡:1 
  ・重圏四星葉文鏡:2
  ・蟠螭(ばんち)鏡:1
  ・星雲文鏡:5面以上
  ・重圏文銘帯鏡:5面以上
  ・内行花文銘帯鏡:13面以上
  ・形式不明:5面
 ・ガラス璧(瑠璃壁):2個片以上
 ・ガラス勾玉
 ・ガラス管玉

↓は春日市、須玖岡本遺跡

www.city.kasuga.fukuoka.jp

■須玖岡本遺跡・岡本地区の2016年の調査
弥生時代中期前半(紀元前150年頃)の甕棺墓(かめかんぼ)から
・銅剣
・青銅製把頭飾(はとうしょく)
が出土した。
把頭飾とは銅剣につける飾りである。

甕棺墓の大きさは縦5.2m、横3.9m。
銅剣は中細型銅剣1点、大きさは長さ42cm、幅は5cm。
青銅製把頭飾は1点、大きさは高さ4.5cm、幅は5.5cm前後。
遺物周辺には水銀朱が見られたとされる。

甕棺墓は国内最大級の大きさとされる。
また福岡平野の奴国域での青銅製の把頭飾が出土したのは初めてとされる。
なお、甕棺の形状から次に示す須玖タカウタ遺跡の遺物と同時期であったとされる。

↓は春日市、銅剣と青銅製の把頭飾が出土したことを紹介しているページ

www.city.kasuga.fukuoka.jp

また、下記によれば坂本地区において一度に49個の銅鏃を作ることができる「連鋳式銅鏃鋳型」が見つかっている。
↓は春日市、須玖岡本遺跡、坂本地区3~6次調査出土

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■須玖タカウタ遺跡
2016年に行われた須玖タカウタ遺跡の発掘調査で青銅器の「土製」鋳型が複数発見された。土製鋳型はもろく、残らないとされていた。それが今回、形が残っている状態で発掘された。銅戈(どうか)の鋳型であったことがわかっている。
YOUTUBEにて土製鋳型によって青銅器の鋳造を再現した実験が公開されている。なお、同遺跡では青銅製の多鈕鏡(たちゅうきょう)の石製鋳型なども見つかっている。
↓はYOUTUBE春日市公式チャンネル、弥生・土製鋳型を造る「須玖タカウタ遺跡 土製鋳型再現実験」

www.youtube.com

↓は春日市、須玖タカウタ遺跡

www.city.kasuga.fukuoka.jp

<参考>
魏志倭人伝の時代、熊本付近が邪馬台国、鹿児島が狗奴国と推定される。
九州内において当時は共和制的な連合国であったと考えられる。
高千穂峰の王朝が衰退、倭国大乱のあった頃には熊本付近のヤマト国に覇権が移っていた。
卑弥呼の時代、小国が乱立、ヤマト国は30ほどの国をまとめあげた連合国であった。

奴国や伊都国といった北部九州は朝鮮半島からの渡来を監視、武力で抑える役目があったと思われる。
魏志倭人伝では一大率として扱われている。
のち西暦300年前後の時代にヤマトタケルが東征、やがて近畿で中央集権的な国家が築かれていく。
奈良盆地の大和は第二期のヤマトである。

<参考>
186.唐書からわかる倭奴国は鹿児島にあった - シン・ニホンシ (hatenablog.com)
187.倭奴国史~狗奴国の西暦57年以降の時代~ - シン・ニホンシ (hatenablog.com)
須玖遺跡群 - Wikipedia
須玖岡本遺跡 - Wikipedia

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