前回、出雲の上塩冶築山古墳、十字の冠を紹介。香川・善通寺市の王墓山古墳(おうはかやまこふん)からも金銅製冠帽が出土、十字のデザインがみられる。次の流れで紹介していく。
・王墓山古墳(おうはかやまこふん)
・金銅製冠帽(こんどうせいかんぼう)について
・有岡古墳群(ありおかこふんぐん)
・野田院古墳
・磨臼山古墳(すりうやまこふん)
・鶴が峰4号墳
・丸山古墳
・空海(くうかい)
■王墓山古墳(おうはかやまこふん)
所在は香川県善通寺市善通寺町。
形式は前方後円墳。
有岡古墳群の1つ。
築造は6世紀前半。
形状は全長46m。
埋葬は両袖式横穴式石室。
内部に石屋形がある。
石屋形とは板石を組み合わせてつくられた遺体の安置施設である。
当地域に石屋形があるのはめずらしいとされる。
出土品に
装身具類に
・金銅製冠帽:1
・金環:1組
・銀環 4組
ほか多数
武器・武具に
・挂甲 1(小札が約200)
・銀装鍔付鉄刀:1
・銀象嵌入鉄刀:1
ほか多数
ほか、馬具、農工具類、土器など豊富に出土している。
↓善通寺市のページから王墓山古墳、のちに紹介する野田院古墳、宮が尾古墳のパノラマビューが見える
■金銅製冠帽(こんどうせいかんぼう)について
金銅製冠帽の復元模型は十字の形をしている。
ただしメノラーから枝の数が減り、やや十字がかっているような形。
↓は空海NAVI、王墓山古墳、古墳の上からの様子や出土した金銅製冠帽が確認できる
王墓山古墳が属する有岡古墳群とは。
■有岡古墳群(ありおかこふんぐん)
善通寺市では大小400基の古墳が確認されている。
有岡古墳群は弘田川流域の有岡地区に分布する。
うち、6基が国指定史跡となっている。
野田院古墳、王墓山古墳、宮が尾古墳、磨白山古墳、丸山古墳、鶴が峰4号墳である。
古墳時代の前期から後期にかけての首長墓と考えられている。
同じ系図によるものと考えられているという。
空海(弘法大師、生没年774年~835年)の祖先ともいわれる豪族の墓群ではないかとされる。
古墳の築造順は
・野田院古墳:3世紀後半
・磨臼山古墳:4世紀後半
・鶴が峰4号墳:5世紀前半
・丸山古墳:5世紀中葉
・王墓山古墳:6世紀前半
・宮が尾古墳:7世紀初頭
とされる。
↓は善通寺市、有岡古墳群
続いて野田院古墳、磨臼山古墳、鶴が峰4号墳、丸山古墳、宮が尾古墳を紹介。
■野田院古墳
所在は香川県善通寺市善通寺町。
大麻山(おおさやま)の山腹の標高405mにある。
築造は3世紀後半。
大きさは全長44.5m。
形式は前方後円墳。
墳丘には葺石はあるが、埴輪は見つかっていない。
後円部の中央に竪穴式石室が2基存在。
後円部は石だけを積みあげた「積石塚」。
おおきさは直径21m×高さ約2m。
古墳から出土した遺物に
・ガラス玉
・鉄剣
・土師器(はじき)
などがみられるという。
↓は善幸寺市デジタルミュージアム、野田院古墳
↓は善通寺市観光協会サイト、出土しているガラス製小玉と碧玉製管玉の画像が確認できる
■磨臼山古墳(すりうやまこふん)
所在は香川県善通寺市生野町。
標高119mに位置。
形状は前方後円墳。
大きさは墳丘長49.2m。
築造時期は4世紀後半。
埴輪が出土している。
埋葬は主体部に刳抜式割竹形石棺がみられる。
石材は香川県国分寺町鷲ノ山産。
石棺内部は朱が詰められていたとされる。
盗掘を受けて副葬品が失われている。
石枕がみられる。
磨臼山古墳の石棺は美しく、石工の加工技術の高さを窺い知ることができるという。
平成5年時点で香川県において13個の石棺がみられるという。
そのほとんどに造りつけの枕がみられるという。
↓は文化遺産オンライン、磨臼山古墳の割竹形石棺
↓は古墳マップ・磨臼山古墳、石棺の様子などを写真で確認できる
■鶴が峰4号墳
所在は香川県善通寺市生野町。
大きさは全長26m。
形式は前方後円墳。
築造は5世紀前半頃。
盗掘にあっている。
しかし石室から玉類が出土した記録が残っているという。
↓はgooglemap、鶴が峰4号墳
↓は善幸寺市デジタルミュージアム、鶴が峰4号墳
■丸山古墳
所在は香川県善通寺町。
形式は前方後円墳。
大きさは全長54m。
築造は5世紀中ごろ。
↓はgooglemap、丸山古墳
■宮が尾古墳
大きさは直径約20m
形式は円
周溝がある。
築造は6世紀後半。
出土品に
・耳環
・刀子
・須恵器
などがある。
埋葬は両袖式横穴式石室。
古墳の壁面には線刻画が描かれており、装飾古墳であるという。
・羨道(玄室に入る通路):武人が2体
・玄室(棺を納める部屋)の奥の壁:人物群、馬に乗った人物、船団など
が克明に線刻されているという。
また、石室内から寛永通宝なども出土、江戸時代に博打場として利用されていた形跡がみられるという。
↓はgooglemap、宮が尾古墳
↓は善幸寺市デジタルミュージアム、宮が尾古墳
■空海(くうかい)
真言宗の開祖。
生没年は774年~835年。
出身地は讃岐国多度郡屏風浦、現在の香川県善通寺市であるとされる。
諡号は弘法大師(こうぼうだいし)。
俗名は佐伯 眞魚(さえきのまお)。
読み方にはマオのほか、マイオ、マナ説がある。
遣唐使の長期留学僧として唐に渡った。
<参考>
・空海 - Wikipedia