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308.七福神と日本の中のインドの神々~鯛を持つエビスは古代に帰化した神?~

前記事で磯良恵比須を取り上げた。今回は七福神について紹介し、古代における日本とインド方面とのつながりを示したい。このことで恵比須とはどのような民族であったかという疑問を提起する。次の流れで紹介していく。

七福神信仰
七福神の構成
・恵比寿
・大黒天
毘沙門天
・弁財天
・布袋
・福禄寿
・寿老人
・八福神
七福神信仰の八仙起源説
・まとめ
・考察:恵比寿とは古代に帰化した人々では?

七福神信仰
福徳をもたらす神さまを「福神」という。
福徳とは、他者に恵みを与えて功徳を積む善行、それにより得られる功徳。
七福神信仰自体は室町時代から起きたとされる。
↓はwikipedia歌川国芳の浮世絵による七福神

ja.wikipedia.org

七福神の構成
七福神には次の神々があてられる。
・恵比寿
・大黒天
毘沙門天
・弁財天
・布袋
・福禄寿
・寿老人

現在のメンバー構成は江戸時代にほぼ固定化された。
ただしそれ以後も構成が異なることがあった。

では七福神の信仰は江戸時代かというとそうではない。
古くには平安時代最澄がインド・ヒンドゥー教の大黒天を台所の神として祀ったことがきっかけで徐々に民間に広まっていったとされる。

以下で恵比寿を含む7人の神々を紹介していく。

■恵比寿
恵比寿は唯一の日本を由来とする神とされる。

日本書紀伊邪那岐命伊邪那美命の間の子の「蛭子ヒルコ)」、あるいは大国主神の息子の「事代主神コトシロヌシ」などを祀ったもの。

特徴は右手に釣ざおを持つ。
左手には鯛を抱えていることが多い。
古くは漁業の神であったとされる。
しかし海運守護、商売繁昌、五穀豊穣の神など福の神として時代によって変遷したとされる。

■大黒天
大黒天はインドの神。
インドのヒンドゥー教シヴァ神の化身マハーカーラ神を由来とする神。

インドの神であるが、大黒(ダイコク)が「大国」と通じて日本の「大国主命」と混同されることも。

特徴は右手に打ち出の小槌を持つ。
左手に大きな袋の口を握る。
そして米俵の上に乗っている。
福徳の神とされる。

毘沙門天
元はインドのヒンドゥー教のクベーラ神。
日本では毘沙門天(ヴァイシュラヴァナ)として知られる。

「四天王」として祀られる場合は「多聞天(たもんてん)」と呼ばれる。

特徴は甲冑を着ている。
三又の矛を持つ。
小さな宝塔ほうとうを持つ。
福徳や財宝の神。
仏教に取り入れられたのちに戦いの神として信仰された。

弁才天(弁財天)
元はインドのヒンドゥー教の女神であるサラスヴァティー神。
特徴は羽衣をまとい、琵琶を弾く女神である。
本来はインドの農業神であったが、仏教に取り入れられて音楽、芸能、知恵の神、天女となっている。

■布袋
中国の仏教の禅僧を由来とする。
唐時代末期の明州(現在の中国浙江省寧波市)に実在した禅僧・布袋和尚を神格化したものとされる。
特徴は胸やお腹が出た状態で描かれ、布の袋を持つ。
円満の神とされる。

■福禄寿
中国を由来とする。
道教の道士・天南星の化身。
寿老人と同体異名の同一神とされることも。
その場合は道教の神で南極星の化身・南極老人とされる。

特徴は背が低く、白髪、杖を持つ。
大きな耳たぶ。鶴と共に描かれる場合がある。
長寿を授ける神。

名前に意味がある。
「福」は幸福道教の教えである子孫が生まれること)
「禄」は財宝。
「寿」は長寿を表すとされている。
↓はwikipedia、福禄寿

ja.wikipedia.org

■寿老人
中国を由来とする。
道教の神で南極星の化身の南極老人
日本の七福神の場合は白鬚明神とされることも。

特徴は背が低く、白髪、杖を持つ。
桃や鹿と共に描かれることがある。
長寿を授ける神。
福禄寿との混同がある。
↓はwikipedia、寿老人

ja.wikipedia.org

■八福神
七福神に一神が加わって八福神となる場合がある。
この場合、お多福、吉祥天、達磨などが加わる。

吉祥天はインドのラクシュミー女神。
仏教では毘沙門天の妃とも。
ヒンドゥー教ではヴィシュヌ神の妃あるいは愛神カーマの母。

達磨は5世紀頃の高僧。
南インドの王子あるいはペルシア人とも言われている。
↓はwikipedia、達磨

ja.wikipedia.org

七福神信仰の八仙起源説

八福神の起源は中国の八仙(八福神)ではないかとする説がある。
また、日本の七福神(あるいは八福神)の神々(実在した英雄であろう)の主体はインドの神が元となっていることがわかる(一部が中国)

古代においてインド由来の神が中国へと渡来した。
日本の場合、百済を通じて6世紀に仏教が伝来した。
また当時の信仰としては仏教のほか儒教が伝来、その後、道教思想も伝わって日本に影響を及ぼした。

七福神(八福神)の信仰は中国の八仙を原型としつつ、仏教の発祥地であるインドの神々が信仰となっていったのだろうか。

■中国の八仙
以下の8人とされる。

呂洞賓(リョドウヒン)
↓はwikipedia呂洞賓

ja.wikipedia.org

何仙姑(カセンコ)
↓はwikipedia何仙姑

ja.wikipedia.org

張果老(チョウカロウ)
↓はwikipedia、張果

ja.wikipedia.org

・韓湘子(カンショウシ)
↓はwikipedia、韓湘子

ja.wikipedia.org

曹国舅(ソウコクキュウ)
↓はwikipedia曹国舅

ja.wikipedia.org

李鉄拐(リテツカイ)
↓はwikipedia李鉄拐

ja.wikipedia.org

・漢鍾離(カンショウリ)
↓はwikipedia鍾離権(しょうりけん、漢鍾離は別名)

ja.wikipedia.org

・藍采和(ランサイワ)

参考:八仙起源説については詳しく調べる方は下記も参考として頂きたい

crd.ndl.go.jp

■まとめ
七福神、あるいは八福神の中のインドの神々は次の通り。
・大黒天:ヒンドゥー教シヴァ神の化身マハーカーラ神を由来とする福徳の神

毘沙門天ヒンドゥー教のクベーラ神を元とする福徳や財宝の神、戦いの神。

弁才天ヒンドゥー教の女神であるサラスヴァティー神、音楽、芸能、知恵の神。

・吉祥天:インドのラクシュミー女神

・達磨:5世紀頃の高僧で南インドの王子あるいはペルシア人とも

■考察:恵比寿とは古代に帰化した人びとでは?

古代、エビスとはどういう人びとであったのだろうか。

江戸時代においては日本人との認識だが、古墳時代においてははたしてどうだったであろうか?

恵比寿は「鯛」を持つ。
鯛に関するエピソードが海幸彦、山幸彦のエピソードで登場する。
鯛は特別な魚であり、天皇の昼御膳は鯛の塩焼きであった。

その鯛を献上していたのはどこか。
御食国、淡路島である。

エビスは渡来後に日本に帰化した人びとだったのではないだろうか?

次回、エビスとは何だったかをさらに考察する。

↓は和田都見神社でイソラエビスが祀られていることを紹介した回

shinnihon.hatenablog.com

↓過去記事では現代における移民、難民、帰化の違いを確認

shinnihon.hatenablog.com

<参考>
七福神 - Wikipedia
歌川国芳 - Wikipedia
七福神について|大國魂神社
毘沙門天・多聞天についての説明:大岩山毘沙門天:栃木県足利市
吉祥天 - Wikipedia