シン・ニホンシ

日本の歴史を新しい視点でとらえ、検証し、新しい未来を考える

315.十日えびすの由来

今回は十日戎(とおかえびす)に関連して取り上げる。十日戎の起源に迫る。次の流れで紹介していく。

十日戎(とおかえびす)
・江戸時代の阪神地域のえびす講
・鯛を持つエビスは古代に帰化した神
・エビスはエル
今宮戎神社の由緒
西宮神社の御鎮座伝説
・和田神社
・元祖大師・御遺跡

十日戎(とおかえびす)
毎年正月の10日に、恵比寿様に商売繁盛を祈願する神社のお祭り。

古くから海の神、商業、ご利益的な神として信仰を集めた。

室町時代にインドや中国から渡ってきた七福神と結びついて、現在の福の神としてまつられたと考えられている。

そのような中で「えびす講」という行事が生まれた。

商人の家ごとや同業者ごとに恵比寿様をまつる行事であったとされる。

恵比寿様が稼ぎに出かける日、そして帰ってくる日を祝う。
稼ぎに出かける日は1月10日、あるいは1月20日
帰ってくる日は11月20日

特に1月10日前後に行われる「十日戎(とおかえびす)」の行事が有名。
えびす講は関西だけではなく、関東でもみられる。
※地域で異なる。10月20日(月遅れで行う地域は11月20日)と1月20日の年2回、またはいずれかに年1回の場合も。
↓はwikipedia、えびす講

ja.wikipedia.org

■江戸時代の阪神地域のえびす講
兵庫県西宮市の西宮神社
大阪市浪速区今宮戎神社
が、商売繁盛の神として信仰を集め、そこで行われるえびす講が「十日戎(とおかえびす)」として大きなにぎわいを見せるようになった。

西宮神社独特の行事として「福男選び」がある。

1月10日の午前6時に大太鼓が鳴り響く。
そして参拝者たちが表大門(おもてだいもん)が開かれると同時に本殿を目指して走り出す。

早く着いた5000名に開門神事参拝証が配られる。

江戸時代頃から自然発生的に起こってきたとされる。

↓は西宮観光協会、福男選び

nishinomiya-kanko.jp

■鯛を持つエビスは古代に帰化した神
過去記事にて七福神のルーツを紹介、鯛を持つエビスが古代に帰化した神である可能性を提示した。

なお、「神皇正統記」で蘇我蝦夷蝦夷のフリガナはエミシではなくエビスである。

↓過去記事、七福神と日本の中のインドの神々

shinnihon.hatenablog.com

■エビスはエル
エビスは商売繁盛などの現世利益、福をもたらすものとして信仰されている。

古くはエビスはエル、天の遣いであったと考えられる。
↓は長崎県対馬市の和田都見神社の御神体、磯良恵比寿を紹介した回

shinnihon.hatenablog.com
↓磯良恵比寿はイソラ・エルを示していることを紹介した回
shinnihon.hatenablog.com

なぜ開催日は十日なのだろうか。

大阪市浪速区今宮戎神社
兵庫県西宮市の西宮神社
の順で由緒、その土地由来の事象から手がかりを得たうえで考察していく。

今宮戎神社の由緒
豊臣時代の頃には庶民のえびす様への信仰がより厚くなったとされる。

明治には、
それまでの問丸(江戸時代の卸売業者)
・雑喉場の魚市場
・材木商組合
・麻苧商組合
・蝋商組合
・漆商組合
また、金物商組合等が講社を結成、
より一層盛んになったとされる。

十日戎には笹も用いられた。
神事との相性のほか、竹取物語かぐや姫が竹から生まれるということも影響したとされる。
今宮戎神社の由緒

www.imamiya-ebisu.jp

↓は竹取物語について扱った回。「月」をテーマとする物語である。
物語には古代豪族の出自、月の民の記憶が眠っていると考えられる。

shinnihon.hatenablog.com

西宮神社の御鎮座伝説
西宮神社に次のような御鎮座伝説がある。

・古くは茅渟(ちぬのうみ)とされる大阪湾の神戸の和田岬の沖より出現した御神像を西宮・鳴尾の漁師がまつっていた。
・そして御神託があった
・そこから西宮に移し、祭られた
はえびす宮総本社 西宮神社による由緒

nishinomiya-ebisu.com

ここまで神社自体はいつ頃創建されたものかはわからない。
しかし、祭り自体は江戸時代より始まったものだろう。

なぜ「十日」だろうか。

江戸時代以降に鎖国体制(実際は完全な鎖国ではない)に入ったことを考えると、推測ではあるが「十日」という日付に対して「十字日」という意味を込めたのではないだろうか。

なお、戎(えびす)をエビス以外で読むとき、漢音では「じゅう」となる。
「十」を意識し「戎」と関連づけたことがわかる。

続いて「和田岬」には何があったかを見ていく。

■和田神社
和田岬には和田神社がある。
和田神社は蛭子大神が初めてお祀りされた神社。
白蛇を和田神社の神の使いとしている。
蛭子大神が淡路島を出て本土に上陸された最初の地が和田岬であったとする。
↓和田神社公式サイト    

www.wadamiya.jp

↓googlemap、和田神社:画像から蛇がシンボルである

maps.app.goo.gl

■元祖大師・御遺跡
和田神社のすぐ近くに元祖大師・御遺跡がある。

元祖大師は浄土宗の法然上人(ほうねんじょうにん)を指す。

法然は平安末期から鎌倉初期の僧。
生没年は1133年~1212年。

浄土宗の開祖とされる。
南無阿弥陀仏」と念仏を唱えることで死後は誰もが平等に往生できるという専修念仏の教えを説いた。

石製の門がある
その門にはお堂の中興に貢献された方々の銘が刻まれている。
また、その門には三日月、もう片方には丸の穴がある。
太陽と月を示すのだろう。

↓googlemap、元祖大師 御遺跡

maps.app.goo.gl

■参考
京都ゑびす神社は「えべっさん」の名で親しまれている。
その始まりは1202年。
栄西により建仁寺が建立された際に鎮守社として創建されたことによって始まるとされる。
栄西法然は仏教の中興の祖。

中興の祖の活躍とともにやがてエビス信仰が始まっていったのたのだろう。

■感想
十日戎(えびす)十戒(じっかい)が文字にするとあまり違わない。
十日戎の戒はいくさ、中国の西方異民族。
十戒の戒はいましめ。

<参考>
幸せを呼ぶ「十日戎」って関西だけの祭りなの?と神社の人に聞いてみた | ヱビスマガジン | YEBISU