シン・ニホンシ

日本の歴史を新しい視点でとらえ、検証し、新しい未来を考える

319.わざうたとは何か、古来から受け継がれる歌に残すテクニック童謡や民謡

わざうた(謡歌)とはなにか。古代史や近代につくられた歌の謎をとく。わざうたは伝統的なテクニックの一種といえる。次の流れで紹介していく。

・わざうた(謡歌、童謡)
・神が子どもの口を借りて歌わせる例
・わらべうたや翻訳唱歌など
・民謡:金比羅船船(こんぴらふねふね)
・じゃんけんの起源
・民謡ナニャドヤラもわざうた
※ここでは取り上げないが、古今集の物名(もののな、ぶつめい)もダブルミーニングのテクニック披露、古代の知的遊戯の最もたるものとなる。

■わざうた(謡歌、童謡)
古代において政治、社会を風刺したり、予言をした歌。
神が子どもの口を借りて歌わせると考えられていた。
上代における歌謡の一種。

子供に歌わせ、出来事や事の真相を残す。
言ってはいない。歌っているのだ、というヘリクツ的なテクニックであるようだ。
出典:わざうた | 言葉 | 漢字ペディア

■神が子どもの口を借りて歌わせる例
記紀に残る、祟神天皇の将軍の派遣の箇所。

建波邇安王(たけはにやすのみこ)の反乱を少女が次のように予言する。

御真木入日子(みまきいりびこ)はや
御真木入日子はや
(おの)が緒を
窃み弑(し)せむと
後つ戸(しりつと)よ い行き違(たが)
前つ戸(まへつと)よ い行き違(たが)
(うかか)はく 
知らにと
御真木入日子はや

大毘古命が少女に問う。

「汝がいうことは、何のことだ」と。

すると少女は答える。

吾(あ、わたし)は何も言っていない。
ただ歌詠み(うたよみ)をしているだけだ。

これはどういうことだろうか。

「人の悪口を言ってはいけない」というような戒律があった場合に対し、言ったものに対して罰があるような場合。

あるいは悪事をばらされた権力者側から、悪口を言ったであろうと問われた場合への切り替えしのためだろうか。

あるいは、大人はだめだが、子どもなら許されるという暗黙の了解があるとき。

もしくは、人が悪口を言ってはいけない場合、神の代理としてなら、という場合。

言ったのではない、歌っていただけだと。

こういうヘリクツ、盲点をついた権力者への批判、責任を追及された場合の保険が「わざうた」なのだろう。

古代にこのような思想を持つには、律法やギリシャ哲学などの思想が前提知識としてある発想なのかもしれない。

■わらべうたや翻訳唱歌
時代はくだり、江戸時代以前はわらべうたがあった。
これも思想や歴史を後世に残すテクニックだろう。

まずはその歴史から。

明治時代には西洋音楽が入ってくる。
外国民謡や讃美歌を翻訳した翻訳唱歌が登場。

たとえば

・「ちょうちょう(ドイツ民謡)」や
・「むすんでひらいて」など。

「むすんでひらいて」の作詞者は不詳。
作曲者はフランスの思想家・著作家ジャン=ジャック・ルソー

異なる歌詞がつけられた曲として知られる。

日本では
・賛美歌
唱歌
・軍歌

などとなり、最終的には童謡「むすんでひらいて」となった。

戦後はテレビやラジオを通して童謡が放送された。

たとえば、1959年にはNHKおかあさんといっしょ

1961年からはNHKみんなのうた」の放送が開始された。

前回は金毘羅宮をとりあげた。

そこで今回、金毘羅宮に関連する民謡を取り上げる。

■民謡:金比羅船船(こんぴらふねふね)
香川県の民謡。

歌詞は次の通り。

こんぴら船々

追手(おいて)に 帆かけて

シュラシュシュシュ

(まわ)れば四国は

讃州那珂(なか)の郡(ごおり)

象頭山こんぴら大権現

一度廻れば

「こんぴら船」とは。
1744年から、大坂から丸亀間で運行されていた乗合船で、金毘羅参詣客を運んだ。

「追手(おいて)」は追い風のこと。
「シュラ シュ シュ シュ」は風を受けた船が進む様子をあらわしている。

また、近代以降で巨石運搬具を「シュラ(修羅)」と呼んだ。
笹船のような形をした木製のソリである。
古墳時代、瀬戸内海には多くの船が行きかっただろう。

ちなみに、この「こんぴらふねふね」は芸舞妓さんとのお座敷遊びの定番であったとされる。

「こんぴらふねふね」のルールは
・芸妓(芸者)とむかいあい、膳のうえにお椀のような道具を置く
・「こんぴらふねふね」を歌いながら交互に手をその椀にのせる
・椀を片方が取ったら相手はグー、そのままならパーを出す
・間違えたら負け
↓はYOUTUBEにてこんぴらふねふねを紹介されている方の動画

www.youtube.com

続いては、こんぴらふねふねで使われていた「じゃんけん」の起源について。

■じゃんけんの起源
平安時代には
・虫拳(むしけん)という遊びがあった。
中国から九州に伝来したとされる。
三すくみの関係を拳で表すあそびは日本や東アジアから東南アジアにかけての地域に多く見られる。

これが江戸(えど)時代には石拳(いしけん)へと変わった。
そして現在の「じゃんけん」となっていったと考えられている。

なお、このじゃんけんぽんはヘブライ語でも意味が通じる言葉のようだ。

・ジャンは「隠す」の意味
・ケンは「準備する」の意味
・ポンは「来い」の意味
とされる。

ただし「じゃんけんぽん」というこの掛け声は近代につくったものではある。
偶然の一致か、それとも古代ヘブライ語にあわせてつくった掛け声なのだろうか?

■民謡ナニャドヤラもわざうた
ナニャドヤラは過去記事で取り上げたヘブライ語と考えられる民謡。
いつ頃つくられた歌かはわからないが、これも「わざうた」のひとつだろうか。
↓日本最古の民謡ナニャドヤラとヘブライ語の共通点

shinnihon.hatenablog.com

↓は過去記事、祖谷の民謡・みたからの歌は比較的近代と考えられる

shinnihon.hatenablog.com

<参考>
むすんでひらいて - Wikipedia
・Webサイト『世界の民謡・童謡』 童謡の歴史まとめ 明治・大正・昭和
修羅 (そり) - Wikipedia