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238.古代の宮㉒~雄略天皇(十一):山辺小嶋子と歯田根命、人文石小麻呂となった白い狗~

今回はシリーズ第22弾、雄略天皇・11回目を紹介する。山辺小嶋子と歯田根命、人文石小麻呂となった白い狗(いぬ)を紹介。次の流れで紹介していく。

山辺小嶋子(やまべのこしまこ)と歯田根命(はたねのみこと)
・人文石小麻呂となった白い狗
・まとめ
考察~人文石小麻呂の人物名について~

山辺小嶋子(やまべのこしまこ)と歯田根命(はたねのみこと)
即位13年3月(春)。
狭穗彦(さほびこ)の玄孫にあたる歯田根命(はたねのみこと)はひそかに采女(うねめ)の山辺小嶋子(やまのべのこしまこ)を犯した。

※狹穗彦は狭穂彦王(さほひこのみこ)のこと。垂仁天皇の条に登場。垂仁天皇5年に妹の狭穂姫命(さほひめのみこと)に天皇暗殺を試みるが失敗する。

天皇はその話を聞いた。
そして歯田根命を物部目大連(もののべのめのおおむらじ)に預け、罪をとがめようとする。

歯田根命は馬を8匹、太刀を8口をもって罪をはらおうとする。

そしてつぎの歌を歌う。

山辺(やまのべ)の
小嶋子(こしまこ)ゆえに
人ねらふ
馬の八匹(やつぎ)
惜しけくもなし

歌の意味
山辺の小嶋子のために
人びとが狙っている馬8頭を差し出すことは惜しくもない

目大連(ものおおむらじ)はそれを聞いた。
そして天皇に次のように進言する。

天皇は歯田根命から、
資材(たからもの ※1)を餌香市辺(えかのいちべ ※2)
(たちばな)の木の根もと(※3)の土(ところ)に置いた。

餌香(えか)の長野邑(ながののむら、河内国志紀郡長野郷、こちらも現在の藤井寺市あたり)物部目大連に与えました。

※1 当時は資材としては動産である牛馬、奴婢、稲など(不動産は田宅など)とされる。
※2 餌香市辺:河内国志紀郡道明寺村国府。今はの大阪府の「藤井寺市」にでしょうか。
※3 万葉集に「東の市の植木の木の垂れるまで」という歌があり、古代の市は露店のため、木陰を必要としていたと推測されている。

↓はgooglemap 藤井寺市

goo.gl

藤井寺市のHP、藤井寺市の市の変遷の歴史が紹介されている

www.city.fujiidera.lg.jp

↓はgoogle map、藤井寺市藤井寺、岡ミサンザイ古墳(仲哀天皇とされる)近辺

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■人文石小麻呂に化けた白い狗
即位13年8月(秋)。
播磨国御井(みいくま)の人文石小麻呂(ひとあやしのおまろ)は力があり、心が強いと言われていた。
行動は欲しきままにし、暴虐(あしくさかさまなるわざ)であった。
路中に抄劫(ちい、古訓のひとつとしてはかすめつつ とされる)して、道行く人を通えないようにした。
商客(あきびと)のふね(小舟のこと)を断へて(たえて)、奪い取った。
国の法と違い、租税を納めなかった。

天皇は春日小野臣大樹(かすがのおののおみおおき)を派遣し、敢死士(たけきひと)を100人、並びに火炬(ともしび)を持ち、宅(いえ)を囲んで焼いた。

そのとき、火炎(ほのお)の中から白い狗(いぬ)が暴れ出でた。
そして大樹臣(おおきのおみ)を追った。
その大きさは馬のようであった。

大樹臣は神色(たましいおもへり)を変(ほのかわ)らずして(※)、刀を抜いて斬った。
※顔色を変えず
そして文石小麻呂に化けてなった。

■まとめ
山辺小嶋子(やまべのこしまこ)は歯田根命(はたねのみこと)にとって人びとが欲しがる馬八頭、そして太刀8口を差し出すこともいとわないほどの女性。

・現在の藤井寺市付近の発展の根拠が示されている
 ※仲哀、応神、中津姫皇后(応神の皇后)、允恭の陵などがあるエリア。
・人文石小麻呂、ひとあやしのおまろは力も強く、心も強い。この時代に商人がいたことが示される。

■考察~人文石小麻呂の人物名について~
「ひとあやしのおまろ」はは単なる言葉遊びなのだろうか?
白い狗(いぬ)が人文石小麻呂に化けるというエピソードは不思議な内容だ。

(人)文石小麻呂は反対から読むと「ローマ王のいしぶみ」で「ローマ王の石碑」とも読める。

なお〇〇麻呂という名前の人物はこの条に限らないのだが、この条において商人の存在が記されている。よってローマから来た新羅を経由してやって来た石工や文字を扱える渡来人を紹介しているのかもしれない。

補足として
新羅にアラブ人が来ていたこと
・日本人のDNAが中東とつながりがあること
・伊都国の平原遺跡で地中海を原産とするガラス製品の出土が見つかっている

このことから、古代に中東とのつながりが何らかあったことはあったと考えられる。
参考①:過去記事にて新羅に西方からローマングラスを運んだ人々の存在を紹介

shinnihon.hatenablog.com

参考②:過去記事にてY染色体ハプログループの遺伝子解析結果を紹介

shinnihon.hatenablog.com

<参考>
日本書紀(三)岩波文庫
物部目 - Wikipedia