今回は清原古墳群(せいばるこふんぐん)を紹介する。清原古墳群のひとつに江田船山古墳があり、ワカタケルの名前とペガサスなどの模様が刻まれた鉄剣が出土している。また江田船山古墳のある清原台地にはエジプトのピラミッドと同じ石積みの工法でつくられた「トンカラリン」がある。次の流れで紹介していく。
・清原古墳群(せいばるこふんぐん)
・江田船山古墳(えたふなやまこふん)
・京塚古墳
・虚空蔵古墳
・塚坊主古墳
・トンカラリン
・トンカラリンの菅原神社
・竈門菅原神社(かまどすがわらじんじゃ)
・疑問まとめ
■清原古墳群(せいばるこふんぐん)
清原古墳群の所在は熊本県玉名郡和水(なごみ)町、旧:菊水町である。
前方後円墳が3基あり、江田船山古墳、塚坊主古墳、虚空蔵塚古墳。
円墳が1基あり、京塚古墳である。
熊本県教育委員会の資料によれば上記の古墳は下記の1.~4.にあたる。
それ以外の遺跡なども総称し「清原古墳群」とされる。
1:江田船山古墳
2:京塚古墳
3:虚空蔵塚古墳
4:塚坊主古墳
5:江田穴観音古墳
6:若宮古墳
7:姫塚古墳
8:椿山古墳
9:清水原家型石棺
10:大久保舟形石棺
11:中原北池の元石棺
12:若宮舟形石棺
13:天神平石棺墓
14:土喰箱式石棺群
15:北原横穴群
16:長力横穴群
17:鴬原入口横穴群
18:中原帽子下横穴群
19:寺山小原坂横穴群
20:牧野横穴群
21:寺山宮の東横穴群
22:いご浦横穴
23:皆行原狸が浦横穴群
24:とんご山横穴群
25:日置氏イッチョ墓
参考:清原古墳群及び岩原古墳群の周溝確認調査 - 全国遺跡報告総覧
■江田船山古墳(えたふなやまこふん)
・全長46m、復元長は61m
・形式は前方後円墳
・周濠は盾形をしている
・出土品に銀錯銘大刀(ぎんさくめいたち)がある。直刀に75字の銘文が刻まれている。銀錯銘大刀には文字のほかにも模様が描かれている。ペガサス、鳥、魚の文様が描かれている。鉄剣は現在は東京国立博物館にて所蔵されている。
・被葬者は現在は3人いたと考えられている。うち一人は鉄剣に記されている典曹(役所の仕事)に仕えたムリテ(无利弖)と考えられている。
・築造時期は5世紀後半頃とされる。なおワカタケルに関する鉄剣が発見された埼玉の稲荷山古墳も年代は同じ時期の5世紀後半である。
↓はYOUTUBE、江田船山古墳ほか、当記事で取り上げた古墳が紹介されている
参考①:↓にて銀錯銘大刀に刻まれたペガサスなどが確認できる
銀象嵌銘大刀 / 観光情報TOP / 和水町
参考②:↓はgooglemap、江田船山古墳
参考③:↓過去記事、江田船山古墳と稲荷山古墳出土のワカタケルの鉄剣 の回
■京塚古墳
京塚古墳は現在復元されている状態。
・形状は円墳
・大きさは墳丘の直径約22m
・築造は土師器などから5世紀後半と推定される
・周溝の幅は約3m(最小で2.1m、最大3.7m)の溝がある
・周溝内から円筒埴輪片、須恵器片、土師甕片、葺石に使った花崗岩の割石が出土している
・墓は舟形石棺と推定されている
↓はgooglemap、京塚古墳
■虚空蔵塚古墳
「虚空蔵」がつく古墳は熊本・和水町の虚空蔵塚古墳の他、群馬県渋川市の虚空蔵塚古墳、埼玉県行田市の虚空蔵山古墳がある。今回は熊本・和水町の虚空蔵塚古墳にあたる。
・築造は6世紀初頭
・形状は前方後円墳(帆立型)
・大きさは墳長52m
・出土品は古墳の主体となる部分からは未調査だが、周溝から円筒埴輪や人物埴輪が出土。
・名前の由来は古墳の整備前、墳頂に虚空蔵菩薩が祀られていたことに由来する
↓はgooglemap、虚空蔵塚古墳
↓はwikipedia、虚空蔵菩薩、梵名はアーカーシャガルバ
■塚坊主古墳
特徴として装飾古墳である。
・所在は熊本県玉名郡和水町瀬川
・形式は前方後円墳
・築造は6世紀中~6世紀後半
・石室は後円部に横穴式石室があり前室と奥室から構成される。
玄室(げんしつ、死者を埋葬する墓室)の奥に屋根型の蓋を持つ石屋形(いしやかた、現代の棺と異なり横から遺体を納めるタイプの開かれた棺)を持つ。
・盗掘によって石室が破壊されている。現在は一部が残っている。
・装飾文は石屋形内部に彩色で円文、連続三角文、菱形文が描かれている。
・平成4年から5年にかけての保存工事に先立って行われた調査で、銅製の四獣鏡、金環、銀環、馬具、直刀などが出土した。
↓はgooglemap、塚坊主古墳
↓はYOTUBE、塚坊主古墳
↓個人の方のブログ、塚坊主古墳の装飾壁画の写真が多数掲載
装飾古墳今昔紀行 Past and Present Trips to Decorated Ancient Tombs in Japan : 和水町 塚坊主古墳壁画に初対面した時の思い出 - livedoor Blog(ブログ)
■トンカラリン
隧道(トンネル)型の遺構。
江田船山古墳のある清原台地に位置する。
全長は464.6m。
自然の地隙(ちげき)、人工の石組暗渠(あんきょ)で構成されている。
石積みが布石積みという日本で珍しい工法が採用されている。
考古学者によってエジプトのピラミッドと同じものでありエジプトのピラミッドとの共通点が指摘されている。
↓はyoutube、トンカラリン
■トンカラリンの菅原神社
トンカラリンのスタート位置は菅原神社とされる。菅原は「すがわら」ではなく実際の読み方は鶯原(うぐいすばる)とされる。
↓はgooglemap、菅原神社
■竈門菅原神社(かまどすがわらじんじゃ)
トンカラリンから5.2kmほど南方に竈門菅原神社がある。竈門菅原神社は「鬼滅の刃」で有名となり同アニメの聖地となっている。
■疑問まとめ
・江田船山古墳の銀錯銘大刀にはペガサスが刻まれている。
ペガサスは天馬であり新羅との関係が連想される。
ワカタケル(雄略)、あるいは鉄剣製作の関係者のいずれかあるいは両方が新羅と関係の深い人物であっただろうか。
・江田船山の鉄剣に記された人物名は「獲加田支鹵」、ムリテ(无利弖)、張安の3人がいる。「張安」と名乗っている。中国人風の名前である。一方のムリテはどのような人物だろうか。百済や呉とも考えられるがはたして。
・雄略を示すとされる「獲加田支鹵」の「支鹵」の「鹵」とは。なぜタケルには「建」や「武」などが当てられなかったのか。
・トンカラリンの石積みはエジプトピラミッドと同じ工法でつくられている。築造年代は不明だが、この地に石の積み上げ技術を持った人たちが渡来していたことは確定的と考えてよい。
■感想
・マンガやアニメで有名となった鬼滅の刃や進撃の巨人(のロケ地)が熊本と縁があるのは興味深い
<参考>
・江田船山古墳 - Wikipedia
・虚空蔵塚古墳 - Wikipedia
・トンカラリン - Wikipedia
・玄室 - Wikipedia
・全国遺跡報告総覧より 京塚古墳 - 全国遺跡報告総覧 より「16380_1_京塚古墳.pdf」