今回は「イラツコ」について取り上げる。イラツコのつく名前の人物は少なく、古代を知る手がかりとする。次の流れで紹介していく。
・菟道稚郎子
・大郎子(おおいらつこ、稚渟毛二派皇子の子)
・波多毗能大郎子(はたびのおおいらつこ)
・嶋郎(しまのいらつこ、仁賢天皇)
・朝日朗(あさけのいらつこ)
■菟道稚郎子
父は第15代・応神天皇。
第16代・仁徳天皇とは異母兄弟の弟とされる。
以下、過去記事より再掲する。
菟道稚郎子は播磨国風土記・揖保郡の条では宇治天皇(うぢのすめらみこと)と称されている。
宇治天皇の時代の出来事として風土記に次のエピソードがある(意訳あり)。
宇治天皇の世(みよ)に宇治連(うぢのむらじ)らの祖先、兄太加奈志(えたかなし)、弟太加奈志(おとたかなし)の二人が大田村の与冨等(よふと)の地を請いて、田をはり、種をまこうとしていたときの出来事。
使用人が物を担ぐ棒をもち、食事の道具などのものを担った。
このとき、物を担ぐ棒が折れた。
ゆえに鍋がおちたところを魚戸津(なへつ)となづけた。
さきの筥(はこ)が落ちたところは上筥岡(かみはこおか)となづけた。
うしろの筥が落ちたところは下筥岡(しもはこおか)。
担っているものを担ぐ棒が折れたこところは朸田(あふこだ)とした。
地名を紹介するエピソードとして菟道稚郎子の別の側面を紹介しているように思う。
なお、菟道稚郎子は応神と矢河枝比売の子。和爾氏と関りがある。
イラツコという名前に関連し、矢河枝比売(宮主宅媛)の妹、小甂媛(おなべひめ、袁那弁郎女)から生まれた菟道稚郎女皇女(うじのわきいらつひめのひめみこ、宇遅能若郎女)がいる。
①応神 ー 菟道稚郎子という関係である。
■大郎子(おおいらつこ、稚渟毛二派皇子の子)
大郎子は、意富々杼王、意富富等王、大大迹王とも。
父は稚渟毛二派皇子(稚野毛二派皇子)。
母は河派仲彦王の女・弟日売真若比売命(おとひめまわかひめ、百師木伊呂弁とも)。
妻は中斯知命(なかしちのみこと)。
父の稚渟毛二派皇子の父は第15代・応神天皇、稚渟毛二派皇子は応神の第五皇子にあたる。
②応神 ー 稚渟毛二派皇子 ー 大郎子(意富々杼王、意富富等王、大大迹王)
という関係がある。
参考:
・意富富杼王 - Wikipedia
・稚野毛二派皇子 - Wikipedia
■波多毗能大郎子(はたびのおおいらつこ)
大草香皇子 (おおくさかのみこ)、大日下王とも。
仁徳天皇の皇子。
母は髪長媛。
③応神 ー 仁徳 ー 波多毗能大郎子(大草香皇子、大日下王)
という関係がある。
↓は安康天皇を紹介した回にて、大草香皇子が登場
■嶋郎(しまのいらつこ、仁賢天皇)
仁賢天皇は第24代天皇。
仁賢天皇には
・億計天皇(おけのすめらみこと)
・大石尊(おおしのみこと)
・意祁命(おけのみこと)
・意富祁王(おおけのみこ)
・大脚(おおし)
・大為(おおす)
という名前があり、
・字は嶋郎(しまのいらつこ)
である。
④応神 ー 仁徳 ー 履中 ー 市辺押磐皇子 ー仁賢天皇(嶋郎、しまのいらつこ)
という関係がある。
■伊勢の朝日郎(あさけのいらつこ)
雄略即位18年8月(秋)。
物部菟代宿禰(もののべうしろのすくね)、物部目連(もののべのめのむらじ)を遣わして、
伊勢の朝日郎(あさけのいらつこ)を伐(う)たした。
朝日郎は官軍(みいくさ)がやってくると聞き、伊賀の青墓(あおはか)で待ち受けた。
自ら弓を上手に射ることができるのことを誇り、官軍に言った。
「朝日郎の相手は誰がやるのか」
その射放つ矢は二重の鎧をとおる。
官軍はみな怖じ気づいていた。
菟代宿禰(うしろのすくね)はあえて前に出ることはしなかった。
そしてお互いがまもり、二日一夜がたった。
物部目連は自ら大刀(たち)を取る。
そして筑紫の聞(きく※)の物部大斧手(もののべおおのて)とともに楯(たて)を取った。
軍(いくさ)の中へと叫びながら進んでいった。
聞:豊前国企救郡、現在の福岡県北九州市小倉区・門司区
朝日郎は遠くから見ていた。
そして大斧手の楯と二重の甲(よろい)を弓で射た。
大斧手の体に矢が一寸(ひとき)入った。
大斧手は楯を持って物部目連を覆い隠しまもった。
物部目連は朝日郎を捕らえ、そして斬った。
なお、雄略即位18年は474年とされる。
↓は雄略天皇・即位18年にて朝日朗(あさけのいらつこ)が登場する回
■まとめ
イラツコの名前を持つ5人を紹介。
①応神 ー 菟道稚郎子
②応神 ー 稚渟毛二派皇子 ー 大郎子(意富々杼王、意富富等王、大大迹王)
③応神 ー 仁徳 ー 波多毗能大郎子(大草香皇子、大日下王)
④応神 ー 仁徳 ー 履中 ー 市辺押磐皇子 ー 仁賢天皇(嶋郎、しまのいらつこ)
ここまでは系図上はいずれも応神から始まっている。
そして伊勢に
⑤朝日朗(あさけのいらつこ)
がいる。
<参考>
・菟道稚郎子 - Wikipedia
・大草香皇子 - Wikipedia
・朝日郎 - Wikipedia